デジタルネイティブ世代の子育てのコツは「メディアと上手く付き合うこと!」 駒谷先生に聞く「親子のメディア情報リテラシーとは?」|こども教育総合研究所
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お子さまが「なかなかスマホやゲームをやめてくれない」といったお悩みはありませんか?
先日のこども総研アンケートでも、こうしたお悩みが寄せられており、保護者の永遠のテーマとも言える課題ではないでしょうか。
そこで今回は「第2回 教えて!駒谷先生」として、実践女子大学教授の駒谷先生に令和の親子とメディアの関わり方について伺いました。

前回の記事はこちら:学力にも集中力アップにも!子どもの成長に必要な3つの力とは?駒谷先生に聞く「非認知能力」


●お話しを伺った人:
駒谷 真美(こまや まみ)氏
実践女子大学人間社会学部 人間社会学科教授
専門は幼児教育、メディア教育、メディア心理学。
著書に「わくわくメディア探検 子どものメディア情報リテラシー」(同文書院)
駒谷メディアラボ


デジタルネイティブ世代の保護者がソーシャルネイティブ世代の子どもを育てる新時代

親子でメディアと上手に楽しくつきあうコツをご紹介する前に、まず保護者・子ども・メディアの関わりについてお話しましょう。

保護者の世代は、いわゆる「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代です。生まれた時からインターネットと共に成長してきました。必要な情報はテレビよりパソコンやケータイで知り、モバイル(スマホ)メディアやソーシャル(交流)メディアの黎明期を体験しています。Face to Face(直接対面するコミュニケーション)よりComputer Mediated Communication(コンピュータを介したコミュニケーション)に親しみを持っていて、インターネットを生活メディアとして使っています。

一方子どもたちは、ソーシャルメディアが身近にある環境で育っていて、「ソーシャルネイティブ」と呼ばれています。ソーシャルメディアの全盛期から定着期を過ごしています。デジタルメディアの直観的感覚的操作性に優れていて、成長するにつれてオンラインゲームやスマホのLINEなどを駆使してSocial Media Communication(ソーシャルメディアを介したコミュニケーション)が活発になります。インターネットは「いつでもどこでもつながる」と感覚的に捉えていて、無防備に接触したり情報を鵜呑みにしたりする傾向もあります。

このように、保護者世代と子ども世代は、双方ともデジタルメディアと関わっていますが、実際のところ微妙なズレが生じています。親世代は、急激に発展するソーシャルメディアに難無く順応していく子ども世代とどのように接していいのかと悩んでいます。デジタルネイティブの保護者は、デジタルジェネレーションギャップを感じながらも、ソーシャルネイティブの子どもたちを日々育てています。今まさに人類史上初、新しい時代の子育てが始まっているのです。

デジタルネイティブの子育て

デジタルネイティブの親とソーシャルネイティブの子どもをつなぐ鍵「メディア情報リテラシー」

では、デジタルネイティブの親世代は、どのようにソーシャルネイティブの子ども世代と関わればよいのでしょうか。鍵となるのが「メディア情報リテラシー」です。「メディアを主体的に読み解き、高度情報社会を生き抜くチカラ」を指します。2011年にUNESCOが提唱したグローバルな概念で、図1のように、オールドメディアからニューメディアまで含まれています1)

メディア情報リテラシーの構成要素

「メディア情報リテラシー」は、残念ながら生まれつきの才能ではありません。自分で学んで身につける能力なのです。では「メディア情報リテラシー」を学校教育で教えてもらえるかというと、そうでもないのが現状です。確かに2020年から小学校の新学習指導要領に必修化されたプログラミング教育も「メディア情報リテラシー」の中に入ります。しかし小学校でのプログラミングは、教科が新しくできるのではなく、算数・理科・社会や総合的な学習でエッセンスとして取り入れられるだけなので、根本的にメディアの特性を知り理解する学習ではありません。

そこで、家庭教育で「メディア情報リテラシー」を教える必要があるのです。デジタルネイティブの親世代もソーシャルネイティブの子ども世代と一緒に「メディアと上手に楽しくつきあう」大切さを知ってほしいと思います。

どうやって「メディア情報リテラシー」を教えるの?

保護者の中には、「自分が子どもにメディアとのつきあいかたを教えることができるのか」と不安になられると思います。それは当然のことです。デジタルネイティブ世代と言っても「メディア情報リテラシー」を意識的に学んだ方はかなりの少数派です。なので、段階を追ってコツをお伝えします。

Step 1 メディアのメリットとデメリットをクリティカルに見極めよう!

最初のステップは、ゲームやスマホなど子どもたちの“生活メディア”のメリットとデメリットを保護者がしっかり捉えることです。

まずメリットについて、ゲームの場合、夢中になって集中力が高まるだけでなく、試行錯誤しながら次々と進めていくので問題解決能力、様々なキャラクターが縦横無尽に動き回るので空間認識能力が養われます。「成績上位の子どもたちは、ゲームを全くしないのではなく、1日1時間以内は遊んでいる」という調査結果2)があり、タイムマネージメントや自己管理するきっかけにもなりえます。小学生に人気のマインクラフトは、学習教材としても注目されていて、プログラミング教育の効果も認められています3)

またYouTubeなどのネット動画の場合、12歳以下の子どもの7割近くがネット動画を見ていて4)、人気のYouTuberや動画は学校で話題に上ることが多いので、子どもたちは、知らず知らずにネットの情報収集力に長けています。特に、男子小学生にとってYouTuberは、人気の職業の第2位で5)憧れや夢を抱く対象となっています。

LINEなどのSNSの場合、身近な家族から遠方の祖父母や親戚まで交流を深めたり、災害や緊急時に安否確認したりして、役立っています。なかでも女子小学生にとってLINEは、友だちとつながる重要なコミュニケーションツールになっています。

もちろんデメリットも数多くあります。まずゲームでは、依存が深刻化しています。2019年にWHO(世界保健機関)が、ゲーム依存を「ゲーム障害」の病名で国際疾病の依存症分野で認定しました。ゲーム障害とは、ゲームで遊ぶ時間を自分でコントロールできない、学校や勉強や日々の生活よりゲームを優先してしまう症状が1年以上続く状態6)をいいます。

次にスマホでは、LINEいじめが問題になっています。LINEいじめは、保護者や教師が気づきにくい閉ざされたネットの中で起きています。いじめの発端は、うっかり未読や既読スルーしてしまう・誤解を招くLINEスタンプを送ってしまう・言葉やニュアンスを勘違いするなど、些細な事が多いのです。そして一旦いじめが始まってしまうと、いじめ対象者のトークだけを無視してレスしない「ネグレクト」、いじめ対象者をLINEグループから外して別に他のグループを作る「仲間外れ」、グループや不特定多数の集団から言葉で人格否定される「誹謗中傷」、いじめ対象者の個人情報やいじめられている映像や画像をグループで共有したりSNS投稿したりして、拡散し完璧に削除することが不可能になる「デジタルタトゥー」などに悪化し、犯罪化になる場合も出ています。LINEをはじめとするネットいじめが、リアルいじめと異なるところは、スマホやコンピュータで遠隔操作するので、学校から家庭までいじめの状態が切れ目なく続くこと、いじめる側に実感が伴わないこと、不特定多数の「傍観者」がいること、伝染して無限に広がることが挙げられます7)。最近ではいじめとは別に、LINEで友だちの輪に入っているはずなのに、独りぼっちなることに怯え、人がどのように自分を見ているか思っているかがとても気になる「つながり孤独」も増えています8)

ここまで読んでくださった保護者の中には、「メディアは怖い」と思われたかもしれません。いわばメディアは諸刃の剣なのです。例えば、台所にある包丁を「危ないから」と子どもから遠ざけていては、料理は一向に上達しません。大切なのは、保護者が安全で適切な包丁の使い方を教えることです。同じように、メディアも使い方次第です。「今の子どもの年齢では、メディアのこのよさを活かそう、この落とし穴は避けよう」と、まず保護者がクリティカルにメディアの長短所を判断することから始めてみてください。

Step 2 ペアレンタルコントロールを上手く使いこなそう!

続いてのステップは、子どもがメディアと楽しく上手につきあえるように、保護者がペアレンタルコントロールを意識的に使うことです。ペアレンタルコントロールとは、子どもに悪影響を及ぼす恐れがあるメディアについて、保護者が監視や制限することです。大まかに分けて、物理的制限と心理的制限があり、表1と表2に具体例を挙げました。

物理的制限(表1)では、距離・時間・場所の制限は、比較的やりやすいと思います。肝心なのは、機能の制限の徹底です。スマホやゲームを購入後子どもが使う前に、保護者がフィルタリングや見守り設定を必ず入れることです。詳細については、ゲームでは「任天堂から保護者のみなさまへ」が参考になります。スマホでは「あんしんフィルター for docomo」や「Apple ファミリー」があります。

ペアレンタルコントロールの具体例

心理的制限では、保護者の立ち位置が重要です。上から目線で「ゲームやスマホを禁止」するのは、良策とは言えません。高圧的や全面的に抑え込まれると、子どもたちは近所の友だちの家で、保護者に隠れてゲームやスマホで遊びがちになります。もしそこでエロサイトに遭遇したり、ゲームで課金してしまったりしてトラブルに巻き込まれても、保護者に禁止されているので家に帰って相談できず、かえって子どもを孤立させ追い詰めてしまいます。なので、保護者は「子どもに寄り添う」スタンスが、ペアレンタルコントロールの心理的制限の基本になります。

表2のように保護者が行う心理的制限は、ゲームやスマホの使用前・使用中・使用後の順に進んでいきます。まず、保護者が事前に子どもに適切なゲームのソフトやスマホのアプリを選定することから始まります。ゲームでは、CERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)の年齢別レーティングマークがとても役立ちます。スマホでは、ポータルサイトの「Yahoo!きっず」、動画サイトの「YouTube Kids」、子ども用アプリの「こどもモード」などからヒントを得られます。次に、子どもが初めて操作する時には、必ず一緒にやりましょう。保護者がお手本となって使い方を子どもに教えてください。子どもが操作に慣れてきても、保護者は「子どもが今どんなゲームソフトに夢中になっているのか」「どんなスマホのアプリを見ているか」「LINEで誰とどんなふうにトークしているのか」を把握するように努めてください。「保護者はいつも自分を見守ってくれている」「いざとなったら保護者にメディアトラブルについてオープンに相談できる」という親子でラポール(互いに心が通じ信頼し相手を受け入れている関係)を形成されるのが望ましいです。

ペアレンタルコントロールの具体例

Step3 親子で一緒にメディアルールを作って、楽しく守ろう!

最後のステップは、ペアレンタルコントロールの発展形として、メディアルールを親子でよく相談して作ることです。「ペアレンタルコントロールは必要だけど、実行するのはむずかしそう」と思われた保護者の方も少なくないでしょう。だからこそ、最初の一歩としてメディアルールを紹介します。「メディアルールを作らねば」と気負わず、少しずつトライしてみてください。

①親子で話し合う前に、保護者の段階で、メディアルールのイメージを共有しておきます。例えば、母親は「宿題が終わったらゲームをやっていい」と言い、父親が「30分ぐらいならいつでもやっていい」と言うとします。これでは、子どもはどちらの言うことを守るべきか、混乱します。いわゆるダブルスタンダードの状態は避けて、家族の教育方針の一つとして統一しておくことが前提です。

②必ず親子で一緒に話し合って作ってください。「このゲームソフトがほしい」「スマホを買って」と子どもがお願いしたら、メディアルールの作り時です。「なぜほしいのか」と子どもの気持ちを聞いてあげてください。子どもの「ほしい」という目的を叶えるには、「ゲームやスマホを買ってもらうと同時にルールが付いてくるよ」「ゲームやスマホはあなたのものではなく、買ってくれた親のものだよ。一時的に貸しているんだよ」と毅然として伝えてください。そして、子どもが「どうすればいいのか」、ルールを自分なりに考える機会を与えてください。

③最初のルールは、子どもの発達段階に応じて、子どもが守れそうな範囲で少な目に作りましょう。子どもは買ってほしさに「これも守れる。あれも頑張れる」と欲張って言うかもしれません。「ルールを守りたい」という子どもの気持ちは汲んだ上で、「約束はずっと守れるものにしようね」と、子どもが納得して決めるようにしてください。

④ルールは、わかりやすさが一番です。例えば、ゲームに夢中で画面に近寄って遊んでいたら、「目がチカチカしちゃうから、このリボンの長さくらい離れて見てね」「(手を伸ばして)このくらい離れるといいよ」と目に見える形で示すとよいです。また、スマホを長時間しているようなら、「スマホが熱くなったら、スマホも疲れているから休ませてあげようね」と、スマホのおふとんに寝かせてあげるなど、子どもの生活習慣と関連づけると自然にルールが馴染んできます。

メディアルール番外編

⑤子どもの安全を守るために、必ず情報セキュリティについて丁寧に話してください。次のような言葉がけをしてみてください9)。「スマホのLINEで噓をついたり、人を馬鹿にしたりしてはいけないよ。人を傷つけるような会話に参加してもいけないね」「面と向かって言えないことをLINEで言ってはいけないよ」「困ったことがあったら、すぐ親に相談してね」「他の人にあなたの顔や体の大切な部分の写真を送ったり、住所・学校・家族・塾や習い事について教えたりしては、絶対にしないでね。インターネットに一度アップされてしまうと決して消せません。悪い噂が広がったり、変な人につきまとわれたり、いじめられたり、とても怖いことになる場合もあるんだよ」

⑥メディアルールについて、保護者の気持ちを率直に子どもに伝えてください9)。「時々はゲームやスマホをしないで過ごしてみようよ。窓から空を見てみようよ。検索しないで考えてみようよ」「あなたがゲームやスマホで失敗することもあるよ。その時は、一緒に話し合って考えていこうね」「ゲームやスマホと楽しく上手につきあっていこうね」

メディアルールを作っても守れなかったら、改善と工夫のチャンスです。「なぜルールを守れなかったか」について、親子でお風呂に入りながら、食事の後にくつろぎながら、リラックスして話してみてください。「面倒くさくなったから」「お友だちは守ってないから」と子どもなりの理由が聞けると思います。「一つできたら○をつけてみようか。1週間守れたら◎をつけようか」と目当てや目標を一緒に考えると、ゴールを達成する喜びにつながってきます。「このルールは、あなたが自分で考えて決めたものだよ。人は人、自分は自分」と、人と違っても大丈夫、自分を大切にする気持ちを一緒に育んでください。

大切なのは、図2のように、子どものメディアと関わる生活環境が整い、子どものゲームやスマホに対する意識や思考が少しずつ変わり始め、行動に出てきて、メディアルールが生活習慣になることなのです10)

メディアルールの基本的な流れ

このようにStep1からStep2、Step3と地道に積み重ねていくことで、デジタルネイティブの保護者の方々がソーシャルネイティブの子どもたちに「メディア情報リテラシー」を教えていってもらえればと願っています。

引用参考文献

1) Wilson, C., Grizzle, A., Tuazon, R., Akyempong, K., & Cheung, C. (2011). Media and Information Literacy Curriculum for Teachers. UNESCO, Communication and Information.
 Retrieved May 15, 2017, from http://unesdoc.unesco.org/images/0019/001929/192971e.pdf.

2) 朝日新聞EduA. (2021). ゲームで学力は低下する?大規模調査で「1日1時間以内ならむしろ好成績」. 2021/7/21.
 2021年8月1日検索. https://www.asahi.com/edua/article/14382712

3) 朝日新聞EduA. (2019). プログラミング教材、必修化目前で小学校低学年向けが充実 トレンドは「マイクラ」やロボット.2019/7/12.
 2021年8月1日検索. https://www.asahi.com/edua/article/12528449

4) 総務省.(2019). 令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査.
 2021年8月1日検索. https://www.soumu.go.jp/main_content/000644166.pdf

5) 第一生命保険.(2021). 第 32 回 大人になったらなりたいもの全国調査
 2021年8月1日検索. https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/news/pdf/2020_102.pdf

6) 日本経済新聞. (2019). ゲーム依存は病気 WHO、国際疾病の新基準. 2019/5/25.
 2021年8月1日検索. https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45280950V20C19A5MM8000/

7) 東京都教育委員会.(2019).令和2年度版SNS東京ノート1(小学校1-2年生用), 2(小学校3-4年生用), 3(小学校5-6年生用).
 2021年8月1日検索. https://ijime.metro.tokyo.lg.jp/school/

8) NHK.(2018).クローズアップ現代+「“つながり孤独” 若者の心を探って…」2018年7月25日放送

9) Janell Burley Hofmann.(2013). To My 13-Year-Old, An iPhone Contract From Your Mom, With Love: Failure to comply with the following list will result in termination of your iPhone ownership. HUFFPOST, THE BLOG, January 23, 2014.
 Retrieved August 10, 2021, from https://www.huffpost.com/entry/iphone-contract-from-your-mom_b_2372493

10) 與良昌浩.(2014).プロのファシリテーターが語る「楽しく、まじめに対話する場を通して、課題解決や未来創造に自ら動き出せるように」.
 ベネッセ教育総合研究所,これからの幼児教育 2014秋号,p.23.


今回は2回にわたって、駒谷先生に子育て世代が知っておきたい「非認知能力とは?」や「メディアリテラシーとは?」を解説いただきました。
子育ての悩みは尽きないですが、少し発想の転換をすると道が開けることもきっとあるはず!ぜひご参考になさってみてくださいね。

執筆:駒谷 真美(こまや まみ)氏

駒谷 真美(こまや まみ)氏

実践女子大学人間社会学部 人間社会学科教授 専門は幼児教育、メディア教育、メディア心理学。 著書に「わくわくメディア探検 子どものメディア情報リテラシー」(同文書院)

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