「STEAM JAPAN AWARD 2020」審査員に聞く!課題解決力とグローバルな子育ての秘訣|こども教育総合研究所
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「STEAM JAPAN AWARD 2020」審査員に聞く!課題解決力とグローバルな子育ての秘訣

2020/08/07

次世代教育「STEAM教育」について発信するメディア 『STEAM JAPAN』の編集長であり、今年初の取り組みとなる“「自ら課題を設定し、アイデアをカタチにして解決していく」STEAM人材を表彰する”「STEAM JAPAN AWARD 2020」の審査委員を務める井上氏にお話しを伺いました。

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お話を伺った人

井上 祐巳梨 氏
株式会社Barbara Pool 代表取締役 / クリエイティブプロデューサー
東京都出身。日本大学芸術学部卒業。学生時代から地域の町おこしイベントや、2,000人超を動員する学生最大級アートイベントの立ち上げを代表として行う。芸術学部奨励賞(最優秀表彰)受賞。大手広告代理店に入社。大型イベント案件にて社長賞受賞。2013年オーストラリア政府のキャンペーン「The Best Job in the World(世界最高の仕事)」では、世界60万人から日本人唯一の25名の中に選出。同年6月に株式会社Barbara Pool 設立、代表取締役に就任。企業・地域の課題を解決するクリエイティブ事業を主体に、多数のプロジェクトに携わる。主な作品に、唐津市PR統括、コスモ石油「スマートビークル」、シーボン.「私たちの心の原点」など。2016年、日芸アートマネジメント会事務局長就任。2017年、豊島区・アートカルチャー構想 池袋シティブランディング戦略会検討委員。2018年、地方創生×クリエイティブ人材育成プログラムをエリア拡大実施。2019年、(株)Barbara PoolにてSTEAM事業部を立ち上げ、WEBメディア「STEAM JAPAN」の編集長に就任。同時期に、経済産業省『「未来の教室」実証事業』に採択。一般社団法人STEAM JAPAN設立、代表理事に就任。新しい次世代STEAM教育事業を推進中。


―井上さんが審査委員を務められている「STEAM JAPAN AWARD 2020」の取り組みと、立ち上げられた経緯について教えてください。

今回のコロナ禍でさまざまな価値観が生まれたと思います。どう動いたらいいのか、何が正解なのか、正しい筋道がわからないようなこの混沌の時代に必要なのは、「課題を解決する力」なのではないかと常々思っていました。

このAWARD設立のきっかけとなったのは、5月ごろの新聞に「男子高校生2人が、区役所のコールセンターの方々に手作りのマスクホルダー30個をプレゼントした」という記事が取り上げられていたことでした。
コロナ禍で働く、困っている人たち―この時はコールセンターの人たちの救いになれば―という想いから、高校生たちが自分で材料選定をして、一つひとつ手作りをして、区役所の窓口まで届けたそうなんですね。たまたまそこに新聞社の記者が通りかかって記事になり、さまざまなメディアで取り上げられたことで話題になったそうですが、偶然メディアの関係者が通りかからなければ記事にはならなかった。この記事を見た時に、「こういった取り組みをしている学生さんたちは、もっとたくさんいるのではないか。」と感じました。課題解決ができる次世代の子どもたちにもっとスポットライトを当てる取り組みをしなければならない、と強く感じたんです。そこで“AWARD”として可視化し、そういう子たちを表彰することで「社会課題を解決する人材の育成につながるのではないか」と考えたことが大きな理由です。
また、こうした子どもたちの活動が、私たち大人たちへの気付きになり、良い循環を生み出していくのではないかと思ったので、早急に準備を進めて7/13に「STEAM JAPAN AWARD 2020」として無事にリリースすることができました。

―“「自ら課題を設定し、アイデアをカタチにして解決していく」STEAM人材を表彰する”これは新しい取り組みであり、まさにこれから必要な人材育成のひとつかと思います。
とはいえ、まだまだ認知や理解度の低いSTEAM教育だと思いますが、今の中高生たちにどのように伝えていけばよいと思われますか。

中高生に「STEAM教育ってこういうものだよ」と、あえて形式を伝える必要はないと思っています。概念を伝えるよりも社会の課題をなんらかのスキルを持って実施した、というプロセスが大事で、分野横断で実行したこと、つまり「なにかを掛け算していく」という過程そのものが大切です。その過程のなかでSTEAM教育ってこういうことだと認識していってもらえれば良いのではないでしょうか。
一方で、多くの中高生たちにできるだけわかりやすく、広く伝えるためにオンライン表彰式やメッセージを掲載する特設ページなどをWEBを活用して発信していく予定です。中高生たちの取組を応援していくと同時に、STEAM教育への啓蒙としても活動を広げていきたいと考えています。

―STEAM教育では、まずは何らかの課題に気づくこと、そしてそれを解決するアイデアを考え、実行することが大切なのですね。中高生たちがAWARD応募に際して、ポイントやコツとなる考え方があれば教えてください。

まず今回の応募にあたっては、「実際につくったもの」を推奨しています。なぜなら、何かをカタチにしたという事実が、その過程においての課題を解決できる力につなげられたと考えているからです。考えてみた、ということから「カタチにした」というこのプロセスですね。もちろん、過去につくってすでに存在していたものやカタチになる前のアイデアベースでも応募可能です。AWARDをきっかけにまずは「やってみよう」と思ってもらえれば嬉しいです。
また、取り組むテーマは大きな社会課題でなくても、家庭や学校など身近なところで困っていることを解決するアイデアでも問題ありません。ふるって応募してもらえたらと思います。
参考までに、「STEAM JAPAN AWARD 2020」のサイトに事例が掲載されています。また、各種「企業賞」も用意しているので、STEAM教育はよくわからなくてもたとえばそれぞれの企業から抱くイメージやその企業に興味のあるところから取り組んでいただくこともできると思います。

―AWARDを通じて中高生たちへのメッセージをひとことお願いします。

何かが、誰かが正解をくれる状況ではなくなってしまいました。このコロナ禍は、大人だけではなく、中高生のみなさんにとっても一種の転換期になったと感じています。
混沌としているときに、「大人が何かをしてくれない」と嘆くのではなく、自分自身が「自ら大人を引っ張っていく」くらいの強い気持ちを持つ今の中高生のみなさんがこれからの世界を変えていくのではないでしょうか。

社会課題を“自分ごと”としてとらえていますか?あるデータでは日本はそうした意識の低い国、とはっきり出てしまっています。社会課題は自分につながっていて、自分で変えられる、というようにマインドをちょっとでも変えていくきっかけになれば嬉しいです。

―子育て中の保護者としては、どのようなことを心がけたら良いでしょうか。

普段の会話のなかで、自分を取り巻く社会のことに疑問を持ってもらえるような声掛けや会話を意識していただけるといいのではないかと思います。たとえばレジ袋が有料化されましたが「レジ袋が有料化されたのはなんでだろうね?」「他の国だとどうなっているんだろう?一緒に調べてみようか」など、社会の一歩先を考えられるようなきっかけづくりを意識すると、子どもたちのマインドも少しずつ変わってくるのではないでしょうか。

―なるほど。家庭でできる「STEAM教育」についてはどう思われますか?

「教えすぎないこと」が重要だと思います。STEAMアクティビティなど情報を掲載している『STEAM JAPAN』ウェブサイトでも、保護者の方から「答えが書いてないのはなんでですか?」とお問い合わせをいただいたことがありました。子どもに「正しく教えなきゃ」と思っている保護者の方も多いのではないでしょうか。まず答えをあげる前に「自分で考えてみる」を後押ししてあげることや「わからないことは一緒に調べる」などを意識するといいのではと感じています。ただ、これは保護者の方も大変ですよね。最短で最適解を導き出すほうが忙しい日常のなかではついしがちです。ただ最初に申しあげたように、特に今のような世の中になった時に「答えはひとつではない」です。これからの子どもたちが生きていく時代を考えれば、「自分で考えるプロセスを大切にしてあげる」ことが重要です。そして、何かができたときに思いっきり褒めてあげることが大切なのではないでしょうか。

また、子どもたちが自由に創造活動に集中できるような環境は大切だと思います。私は三姉妹で、アメリカとイギリスに姉がおりますが、どちらも家の中にクリエイティブスペースを設け、子どもたちが手の届く範囲に制作や実験に関わるものを置くことで子どもたちが主体的に創造活動に取り組める環境を整えています。
大人にとってはゴミのように思う空き箱やキャップなども、子どもには何かを生み出す大切な宝だったりするんですよね。幼少期から遊びの中で試行錯誤を何かを生み出すことは、課題解決につながると思います。

子ども専用のクリエイティブスペースは豊かな創造力を育む

以前、イギリスに住む姉が未就学児向けにSTEAMスクールを開催した際、印象に残っていることがあります。クラスが終わった後に、姉のところに近づいてこう言ったそうです。
「I’m proud of myself」自分のことを誇りに思うと和訳するとちょっと大袈裟かと思いますが、試行錯誤しながらも「出来た!」という気持ちが嬉しかったのだと思います。体験によって、子どもに自信を与え、その自信が創造性につながっていく。そんな良い循環が生まれたらと思います。


今回は「STEAM JAPAN AWARD 2020」の活動を推進する井上氏のインタビューを通して、保護者がどのように子どもたちに接していくと、子どもたちの創造力や形にするマインドを刺激するのかを、具体事例を交えて教えていただきました。
「STEAM教育」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、日々のコミュニケーションを少し意識することで、子どもたちの意欲や育まれる力が変わるのではないでしょうか。

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執筆:ヒューマンアカデミーこども教育総合研究所 編集部

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