慶應義塾大学・田中茂範名誉教授に聞く「子どもの英語教育に必要なこと」|こども教育総合研究所
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慶應義塾大学・田中茂範名誉教授に聞く「子どもの英語教育に必要なこと」

2019/11/19

文部科学省による新学習指導要領の施行により、英語教育に大きな変革期が訪れています。

お子さまの英語教育が変わる―。と多くのメディアで話題になっているので関心を寄せている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、応用言語学者として英語教育に長く携わる田中茂範先生に、英語教育のポイントや子どもたちに大切なことは何かを伺いました。


田中茂範氏のご紹介

コロンビア大学院博士課程修了。慶應義塾大学環境情報学部教授、同大学大学院メディア・政策研究科委員を経て、現在慶應義塾大学名誉教授。

研究領域は認知意味論、英語教育、コミュニケーション論で、実践のための理論構築とその応用としての教材開発などに力を注いでいる。現在は、PEN言語教育サービスのディレクターとして、教員や学校へのe-learningを中心とした言語習得メソッド指導に力を注いでいる。

―先生のご活動について教えてください。

フィールドは「英語教育」、専門は「言語学」です。英語を主な分野として、コミュニケーションの本質や考え方を教育の分野に生かそうと研究・実践してきました。
応用言語学という視点で理論と実践を結びつけ、イディオムや文法事項に新しいアプローチを行った英語学習法を生み出すなど、さまざまな著書や論文を発表してきました。
現在は、これまで開発したコンテンツを生かしながら、英語教育に役立つ教育サービスの提供を行う「PEN言語教育サービス」の代表として、教材の開発や、教員や学校への「e-learning」を中心とした言語習得メソッドの指導に力を注いでいます。

―理論と実践を結び付けて、英語教育の在り方を提案されているのですね。

日本の英語教育は変わりつつありますが、そういった背景のなかで、まず先生側の意識を変える必要があると考えてきました。先生が生徒たちに英語を教える力を高める必要があります。
こうした問題意識からスタートして、PEN(Powerful Educators' Network)という教員のためのサイトプロデュースや、全国各地の中高一貫校や高等学校で、英語教員を対象にした学校単位のワークショップなど、英語教育のあり方についてのコンサルティング業務を行っています。そのほかオンライン動画講義の配信なども手掛けています。
英語教育のトップランナーになりたい、教科書への挑戦をしたい、と常に思っていますね。

多数の著書や論文を発表し、英語教育界で常に新しい挑戦を続けている。

―英語教育にはどのようなポイントがあるのでしょうか。

英語を学ぶ土台には、三つの柱が必要であると考えています。
一つ目は「Authentic -オーセンティック-」であること。子どもだましではなく、使える表現や生きた語彙に触れられる本物のコンテンツを使うことです。
二つ目は「Meaningful -ミーニングフル-」であること。理解ができる、かつ学習者にとって理解をする価値があると思える内容かどうかも重要です。
そして三つ目に「Personal -パーソナル-」であること。学んだことが他人事ではなく「自分ごと」にできるかどうかで、学習への関心や定着は大きく高まります。
たとえば「目が覚める」を「目覚めがいい」という表現にすると、言葉に感情が見えてきますね。「I wake up」に「I feel great」も付け加えることで、自分の日常の一部となり、ぐっと関心を持ちやすくなると思います。
ただやみくもに音読するのではアナウンサー読みになり、メカニカルになるので、英語を自分の日常や感情と関連づけることを意識してはどうでしょうか。

―幼児や小学校低学年の「初めて英語を学ぶ子どもたち」には、何が大切でしょうか。

ひとつは「音としての英語」という認識が重要です。子どもにとって、耳から入る「音」が初めての言葉です。聞こえたものを口に出すなど、口慣れをすることによって英語が上達していきます。これは母国語も同様ですね。子どもは音の感受性がとても良いため、口慣れしやすく上達が早いです。また、ただ真似をするだけではなく、感情を込めて言うことがとても大切です。音とともに、状況のなかで使うことを意識しましょう。

―なるほど。具体的にどんな風に行ったら良いのでしょうか。

たとえば、「give me a break」という言葉がありますね。休憩をください、という意味で使われることが多い表現ですが、たくさん仕事や勉強をして本当に疲れているときに言うときと、ただ学習のために言うときでは、まったく響きが違いますし伝わり方も変わります。
ぜひ、実際に使ってみてください。きっと言葉が心に迫るような感じがするのではないでしょうか。こうして実際の場面で使ってみると、英語を使いこなしている実感ができると思います。

そしてもうひとつ大切なのは「音で遊ぶ」ことです。ここでは例として「wrong」という単語を使ってみます。意味はいったん横に置いて、お子さまと一緒に発音してみてください。
まずは1回。「wro--ng」とゆっくり言ってみたり、早く言ってみたり、色々な言い方を試してみてください。
続いて2回。「wrong,wrong」、そして3回「wrong,wrong,wrong」。
どうですか?3回繰り返すとリズムになりますね。反復することにより、言葉にリズムが生まれて、音に慣れていきます。つまり発音にも慣れていくので、苦手な単語の克服にも有効です。

あとは、決まり文句を意識して使うことも良いと思います。
どこかにぶつけた時に「Ouch!」と言ってみたり、頑張ってねという意味で「Good luck !」と言ってみるなど、英語を素材として使うことで、遊びながら日常に取り入れることができます。

―英語で話すのは少し恥ずかしいですが、簡単な英語なら取り入れられそうです。

臆せずどんどん話していくことで英語は上達していきます。子どももそういった大人の姿を見てコミュニケーションの姿勢を学んでいくでしょう。子どもと一緒に英語を楽しむ、と考えたらいいかもしれません。
また、それには「名詞を知る」ことも大切です。語彙を増やすことは、大変な勉強のように感じるかもしれないですが、実はそうではなく反復練習で身についていくものです。
日常のさまざまなシーンで実際に使っていくことで、英語を身近な存在にすることができます。

たとえば「お風呂」というひとつのシーンをとっても、さまざまな行動がありますね。

  • お風呂に入る → take a bath / have a bath
  • 熱めのお風呂に入る → take a fairly hot bath
  • 湯船につかる → soak in a bath
  • 肩までつかる → soak up to my shoulders

などなど。これらは少し難易度が上がるかもしれませんが、最初は単語から、徐々に行動とセットにして覚えていくことが有用です。

お子さまと一緒に使うときは、表現を決めて「探検ごっこ」などの遊びに工夫しても良いと思います。また、ゲームなどのアプリを活用したコンテンツもありますね。

―「ゲーミフィケーション」という、人を熱中させるゲームの要素や考え方を他分野で応用する取り組みも出てきています。

子どもが楽しみながらできるので、反復練習を続けやすいと思います。継続するなかで身につけた達成感があると、さらなるモチベーションにつながるでしょう。

―最後に、子どもたちに英語に興味を持ってもらうために、私たち大人はどうしたら良いのでしょうか。

保護者や教育関係の方々に共通して必要なのは、子どもと「一緒に楽しむ」ことです。
「すごいね」と声をかけて褒めてあげることはもちろんですが、大人も楽しんでいることが大切です。大人の反応は子どものモチベーションにもつながりますし、取り組む姿勢も変わってきます。
上でも挙げましたが、子どもは日常のなかで無意識のうちに世間と照らし合わせているので、リアリティが感じられると瞬く間に覚えていきます。動画やアプリ、絵本などの良質なインプットで、楽しみながら進められたら良いですね。

―たしかに楽しいとモチベーションが保てるので、上達する一番の近道のように感じます。さっそく、できることから始めてみたいと思います!

幼・小・中学生向け英語教室 ヒューマンアカデミー|ランゲージスクール

お子さまが楽しみながら英語4技能がバランスよく身につく英語教室です。
自分から楽しく続けられるよう開発した動画、アプリ、ワークブックなどの
オリジナル教材を使用し、語彙や文法などの知識が身につきます。
加えて、オンラインレッスンで外国人の先生と英語を実際に話すことで、基礎力と実践力の両方を養うことができます。

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