~副所長訪問記~大妻嵐山中高での「日本郵便の社会課題解決とドローン」特別授業|こども教育総合研究所
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~副所長訪問記~大妻嵐山中高での「日本郵便の社会課題解決とドローン」特別授業

2020/01/28

埼玉県比企郡嵐山町にある大妻嵐山中高の校庭で飛ばしたドローンに手を振る生徒たち(協力:日本郵便・DJI社)

この日の特別授業は、「日本郵便の先端技術を活用した社会課題解決」というテーマで、日本郵便オペレーション改革部専門役の上田貴之氏による講演と校庭でのドローンのデモ飛行を見学するというものでした。

世界第3位の郵便取扱量を誇る日本郵便は、全国に2万4000局の郵便局、18万本の郵便ポスト、37万人の社員を有し、1日に約6100万通もの郵便物を3100万カ所に毎日届けられるように支えています。人の手をはるかに超える高速の自動押印や配達仕分け機の導入や、ドローン・配達ロボットなどの先端技術の導入実験により、人がやる分野・領域の業務をどのように省人化できるかなど、上田氏の語る、日本郵便の数々の挑戦を聴き、改めて日々たくさんの郵便物と人の関わりを感じると同時に、世界ナンバーワンの配達スピードと正確性を認識することができました。

 

新しい取り組みのひとつとして、2018年11月7日に福島県で実用化に踏み切ったドローンの動画が紹介されました。国のロードマップが引かれている2019年の現状では、高速道路や鉄道、山、高圧電線の上を横断することはできません。さまざまな試行錯誤から計画されたルートも、ドローン飛行の許可を1000世帯に個別に訪問してとったり、道路上をドローンが飛行するという注意看板を設置したりと、ドローンの技術開発もさることながら、社会的受容性を高めていかなければならない活動の大変さもあることがよくわかりました。また、現在は、ドローン1フライトにだいたい5~6人ぐらいの人員が必要で、もともと配達員1人より多い人手がかかっていることの解決など、なるべくコストがかからないようにしていくことが、普及の重要な鍵となります。

これらのドローンが持つ期待と課題について生徒たちが理解できたところで、授業は待望のデモ飛行に移ります。

校庭にでると、まずは設置された大きなドローンに生徒たちは興味津々。実際にプログラミングより制御されたドローンが自律自動で離陸し、目的地で荷物を置いて戻るデモ飛行が行われると、走って追いかけていく生徒も。

▼ドローンの動画はこちらからご覧いただけます。

ドローンのデモ飛行見学の後は、ドローンが運べる重量、気候、構造、ドローンを飛ばす資格など、生徒たちから次から次へと質問が次々と質問があがり、これからの社会でドローンが普通に存在し、知っていて当然のことになるであろうことを実感している様子が見てとれました。


この日は、ドローン飛行の特別授業見学に日本教育情報科振興会会長の赤堀先生をはじめ多くの方も参観に来られていました。中学生の部が終わったあとに少し意見交換の場がありましたのでこちらも紹介します。

左から:ヒューマンアカデミー 高橋氏/日本郵便 上田氏/大妻嵐山中高 真下校長先生/日本教育情報科振興会 赤堀会長

(真下先生)今日は、ありがとうございました。中学生がどこまで講演内容を咀嚼できるかなと心配だったのですが、たくさん質問も出てよかったです。

(赤堀先生)すごい質問が出ていたね。勢いがあって素晴らしかったです。

(真下先生)先日、東京モーターショーのあるメーカーのブースを見てきました。Autono-MaaS(自動運転・乗り合いミニバス)専用EVが小型化する構想があるじゃないですか。だから、日本郵便さんが考えたあのかわいいロボットがどういうふうになるのかなって想像しながら今日の講演をお聞きしていました。

(上田氏)そうですね。われわれも郵便車両、動く郵便局みたいなのを持っているのですが、それが自動運転化して、無人の窓口をつければ同じ機能が備わるのではないかと思っています。

(赤堀先生)講演の中で上田さんがおっしゃっていたのは、今後は「一家に1台のロボット」の時代になるということですね。

(上田氏)そうですね。一つの例が、お話ししましたご家庭にある郵便受け箱。あれは昔、明治時代は郵便局が無償で配っていたのです。それが、いつの間にか、自分で買うようなモデルに変わっていて、いまではホームセンターに何百円、何千円で買えるようになった。でも、それが配送ロボットに置き換えられれば、実は郵便局は配達しなくなる。ロボットが配達する郵便局なんです。既にデンマークでは配達していないのです。

(一同)そうなんですか。

(上田氏)ヨーロッパは取りにいく文化が普通に根付いていて自分で取りに行きます。日本はどうしても家まで届けてというニーズが強いのです。

(赤堀先生)話を聞きながらインターネットのルーターを思い出して、モデルは同じなのだけど、いまは結構クラウドになって、ほとんどコンテンツは来ないで、こちら側が見にいくみたいなイメージですよね、どちらかというと。

(上田氏)そうですね。

(赤堀先生)モバイルの時代だから、そうなるのかなと思ってね。

ー赤堀先生、きょうの上田先生の授業はいかがでしたか。

(赤堀先生)すごく深かった。真下校長先生ともお話しさせてもらいましたが、上田先生が言われるように、やっぱり少子化とか地方創生とか叫んでいるけど、なかなかギャップが埋まらないという。年金の話を見ると、暗い話題ばかりだけど、考えてみれば、少子化なので、AI、配送ロボットやドローンとかの新しいテクノロジーを使って、未来を考えてみようじゃないかというのは、明るくなりますね。これから農業なんかはすごくビッグな事業になるよ、まだまだね。だから、いろいろなものの可能性があるんじゃないかなと様々なことに想いをめぐらせながら上田さんの講演を聞いていました。

(上田氏)物流は今後、人や労働力不足が深刻になっていきますので、なにかしらのイノベーションは必要とされますね。

(真下先生)ここの生徒たちには、テクノロジーをどんどん見せてあげたいと思っているんです。あなたたちが生きていく時代は、こういうことが普通になるよって。今、大妻嵐山のスクールバスはディーゼル車なのですが、環境負荷とかいろいろ考えていくと、絶対に電気のほうがいいと思って、今度BYD(注1)の電気バスを入れます。

(注1)比亜迪股份有限公司(BYD)。トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)と電気自動車の研究開発会社設立している。

(赤堀先生)へえ、すごいな。

(真下先生)で、そのうちにいつになるか分かりませんけど自動運転のバスを走らせたいと思っています。

ー真下校長先生は、女性のプログラミング教育についてどんな信念でやられていますか?

(真下先生)女の子がプログラミングをすれば世界がひろがるよと、ただそれだけで。女性、特に高校生とか中学生の次の世代を担う女性が、プログラミングの価値や意味を理解すると社会を変えられると思っています。小学生向けのプログラミングの講座をやっていると、保護者の方が付添いでいらっしゃいます。で、参加者全員にタブレットを配って、みんなを巻き込んでしまう。そうすると、「プログラミング女子になろう」という講座名なのですが、「プログラミングマダムになろう」とか、「プログラミングじいじになろう」もやってと言われて。(笑)

ー学校も、子どもたちがちょっと習って、先生が教わるぐらいのつもりでやったら、ものすごく良い授業になると思います。本当にこちらの学校では、女子校にもかかわらずというと失礼ですが、ものすごくプログラミングとかICTとかに積極的に取り組まれているので、私もすごく感心しています。こちらは、ICT環境は11台を始められたりしているんですか。

(真下先生)もうかなり前から11台、iPadでやっています。Wi-Fiは全部整っているので。あと、いろいろな連絡は全部、Classiとかいろいろ使いながら。子どもたちは子どもたちで、アンケートを自分たちで、Googleフォームを使ってつくっています。

ー素晴らしいですね、でも。ここはいま中学から高校まで、全生徒が11台ですか。

(真下先生)あります。

ーBYOD(注2)でやられているのですか。

(注2BYOD (Bring your own device)は、生徒が個人保有の携帯用機器を学校に持ち込み、それを授業に使用すること。本来は従業員が職場で使用する意味。

(真下先生)はい。本当はBYODにしたいのが、子どもたちのSNSに関していろいろな機種があると、トラブルも起こる可能性があるので、入学のときにipadを買っていただいて、3年で使い切ってもらっています。そこに辞書もそれで辞書ソフトを入れて活用しています。生徒たちは、ドローンを撮るのに持って出てきていましたね。最後まで質問していた2人の生徒はプログラミング少女なんです。小学校6年生でマイクラのサーバー管理者をやったり、エクセルでマクロを使ってゲームをつくったりしています。彼女たちは「みらい力入試」で入ってきた生徒ですね。「みらい力入試」というのはプログラミング入試、課題を自分でプログラムして解決しましょう。そのプログラムを持ってきてプレゼンしてくださいという入試です。

ー赤堀先生、こういう入試、どう思われますか。

(赤堀先生)すごく面白いなと思った。だけど、問題をつくるのが更にすごいなと思ったんですよ。どなたが作られたのですか?

(真下先生)はい。これは私が。 

(赤堀先生)校長先生自ら?これはよくできているなと思ってね。しかも、写真を見るとイメージが湧きやすいですよね。発想が出やすいんじゃない?

(真下先生)みんなちゃんと自分や地域の課題に引き込んで答えられていました。ストーリーテリングのほうは、1回目のときにはSDGsの中から、四つか五つぐらいの目標、ゴールを出して、それについて自分が生活の中でできることはなにかを考えさせて。9分で考えて、3分でプレゼンテーションをするという流れなのですが、素晴らしいプレゼンテーションがありました。12歳の可能性も計り知れないですよね。

(赤堀先生)今日は見学に来て、本当にすごくよかった。

ーみらい力入試で入ってきた生徒さんは、今日みたいな授業は生き生きとしていますよね。

(赤堀先生)生き生きしている。それは真下先生のコンセプトというか理念が活きていますね。


今日のドローン特別授業も含めて、大妻嵐山中学校・高等学校の真下峯子校長先生は、自らICT教育を積極的に推進し、全教室の電子黒板導入・全教室WiFi環境の整備、生徒一人一台のタブレット導入を推進されてきました。2017年度からはじめた「みらい力入試」は、これからのAI時代を自信を持って生きる、自立した女性を育てたいという真下先生の想いの一つでもあり、社会変革のなかで注目されているデジタルトランスフォーメーション(Digital transformation:DX)(注3)が進むなかで、これからのAI時代に生徒たちが力を発揮できるようにしたいという考えが生徒たちに着実に浸透しつつあることを感じることができました。

(注3)ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念

(こども教育総合研究所 副所長・青木)

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執筆:ヒューマンアカデミーこども教育総合研究所 編集部

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