エリクソンが提唱した発達段階とは?段階別の危機や対策を紹介|こども教育総合研究所
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心理学者エリクソンが提唱した「発達段階理論」は、人の一生を8つの時期に分け、それぞれに心理的課題があるとする考え方です。この記事では各段階の特徴と乗り越え方をわかりやすく解説し、保護者が子どもにできる支援やそのメリットについて紹介します。

エリクソンとはどのような人物か

エリクソンは「発達段階理論」を提唱したアメリカの心理学者で、アイデンティティ理論の基礎を築いた人物として知られています。

幼少期

エリクソンは1902年、ドイツ・フランクフルトに生まれました。

実父については詳しく知らされず、母親と継父に育てられたことから、家庭環境に複雑さを抱えていました。さらにユダヤ系で北欧系の外見を持っていたため、両社会の中で浮いた存在となり、差別や孤独を経験します。

このような背景が、後の「アイデンティティ」や発達理論の着想に影響を与えたといわれています。

精神分析家になった経緯

青年期のエリクソンは芸術に興味を持ち、画家を志していました。

その後ウィーンで教職に就いたことを機に精神分析と出会い、児童精神分析の先駆者アンナ・フロイトと師弟関係を築きます。

彼女のもとで学んだエリクソンは、精神分析家としての訓練を積み、心理学の道を本格的に歩み始めました。

発達心理学者として活躍

アンナ・フロイトのもとで学んだ後、エリクソンは精神分析家としての経験を積み重ねていきました。

その後アメリカへ移住し、現地で心理学者として本格的な研究活動を開始しました。とくに発達心理学の分野において大きな貢献を果たし、1950年代には「心理社会的発達理論」を提唱しました。

この理論は人生を8段階に分けて各段階での心理的課題を明示したもので、教育や育児、臨床の現場で広く活用されています。

エリクソンの発達段階理論とは何か

エリクソンが提唱した発達段階理論は、人間の一生を8つの時期に分け、それぞれの段階で直面する心理社会的な課題を明らかにしたものです。

各段階で適切に課題を乗り越えることができれば、次の成長段階に進むための心理的な力(信頼や希望、愛など)を獲得できると提唱しています 。一方で課題への対応が不十分な場合は、自己肯定感の低下や対人関係の不安定さなど、後の成長に影響を及ぼすこともあります。

この理論は、特に子どもの発達や心の変化を理解し、年齢に応じた支援を行うための有効な手がかりになります。

エリクソンが示した8つの発達段階と、それぞれの課題・危機を一覧表にまとめました。

1.乳児期(0〜18ヵ月)

この時期の発達課題は「基本的信頼」の形成です。乳児は保護者の愛情深い対応を通じて、周囲の世界を安全で信頼できるものとして認識します。

たとえば泣いたときにすぐに抱き上げられたり、適切なタイミングで授乳されたりすることで、乳児は「自分は大切にされている」と感じて安心感を得ます。

一方で放置されたり一貫性のない対応が繰り返されたりすると、他者や環境への「不信感」が芽生えやすくなります。信頼の土台が十分に育たないまま成長した場合、後の対人関係にも影響を及ぼしかねません。

この段階を健やかに乗り越えた子どもは、「希望」と呼ばれる心理的な力を身につけます。希望とは、人生に対する基本的な安心感や未来への前向きな気持ちを支える大切な感情です。

2.幼児前期(18ヵ月~3歳)

幼児前期の課題は「自律性の確立」です。

歩く、話す、トイレに行くなど、自分でできることが増えていく時期であり、子どもは「自分でやりたい」という気持ちを強く持つようになります。

保護者が適度に見守りつつ子どもの意思を尊重することで、「自分はできる」という感覚が育まれます。たとえば着替えを自分でやらせてあげるといった、小さな成功体験が重要です。

しかし失敗を強く叱ったり、何でも先回りして手を出したりすると「恥ずかしい」「自分には無理かもしれない」といった否定的な感情が芽生え、やがて自信を失ってしまいます。こうした環境では、自律性が十分に育ちません。

この時期を通して適切な支援が行われれば、子どもは自分の意思で行動する「意志」という力を獲得します。これは、将来的な挑戦にも前向きに取り組む姿勢の土台となります。

3.幼児後期(4歳~5歳)

この時期の発達課題は「自発性の育成」です。

子どもは想像力が豊かになり、自分から遊びや活動を始めようとするようになります。ごっこ遊びや絵を描くといった創作活動を通じて、主体的に行動する姿が見られるでしょう。

保護者がこれを肯定的に受け止め、自由な表現や挑戦を見守ることで、子どもは「やってみよう」という気持ちを強めていきます。

反対に行動を否定されたり叱られすぎたりすると、「やってはいけなかったのでは」と思い込み、罪悪感を抱きやすくなります。

この時期に必要なのは、結果ではなく挑戦そのものを評価する姿勢です。自発性を支える環境が整えば、子どもは目標に向かって行動できる「目的」という心理的強さを身につけることができます。

4.学童期(6歳~11歳)

学童期の課題は「勤勉性の確立」です。

子どもは学校生活を通じて、学習や集団活動に取り組みます。この時期に成功体験を重ねることで「自分にはできる」という有能感を育むことができます。

たとえばテストの点数が上がる、運動会や音楽発表会で力を発揮する、友達と協力して一つの目標を達成する。そうした経験が自信の土台になるのです。

ただし失敗が続いたり周囲と比較されることが多くなると、「自分は劣っているのでは」と感じやすくなります。こうした劣等感は挑戦意欲を奪い、自分の能力に疑念を抱く原因にもなりかねません。

大切なのは、努力の過程に目を向けて評価し、子どもが「頑張れば成果につながる」と実感できる環境を整えることです。

勤勉性が育まれると子どもは課題に粘り強く取り組めるようになり、社会的な役割に対しても自信をもって向き合えるようになります。

5.青年期(12歳~19歳)

青年期の発達課題は「自我同一性の確立」です。

思春期に入ると、子どもは「自分は何者なのか」「将来どうなりたいのか」を模索し始めます。自己理解が深まる一方で、不安や葛藤を抱えることもあります。

この過程で重要なのは、多様な経験と選択の機会を与えることです。部活動、友人関係、進路選択などの場面で本人が意思決定を行い、自己に向き合えるよう支援することが求められます。

保護者が期待を押し付けすぎると、子どもは「役割の混乱」に陥り、自信を失う可能性があります。適度な距離を保ちつつ、信頼して見守る姿勢が大切です。

この段階を乗り越えることで、青年は「忠誠」という、自己と他者に誠実であろうとする力を得ることができます。

6.成人期(20〜39歳)

成人期の発達課題は「親密性の形成」です。

この時期の人は社会的に自立し、友情・恋愛・結婚といった対人関係を通じて、他者と深い信頼関係を築いていくことが求められます。

鍵となるのは、心を開いて他者と関われるかどうかです。それまでの発達段階で、基本的な信頼感や自我の確立ができていれば、健全な親密関係を築くことも自然にできるでしょう。

しかし過去の課題が未解決のまま残っていると、他者との関係に対して不安を抱きやすくなります。孤立感や疎外感が強まると、つながりを避けるようになり、精神的な孤独が深まる恐れも出てきます。

一方でこの段階で親密性を築けた人は、他者とのあたたかな関係を長く維持していけます。そうした関係の中で育まれるのが「愛」という心理的な力です。

誰かと深く関わり合うことで生まれる愛情は、人生に満足感や幸福感をもたらし、心の豊かさを支える源になっていきます。

7.壮年期(40〜64歳)

壮年期は「生産性と停滞」の課題に向き合う時期です。

この時期には仕事や家庭、地域活動などを通じて、社会への貢献や次世代への関わりが求められます。

保護者として子育てに励むこと、職場でのリーダーシップを担うこと、社会貢献活動に参加することなど、生産的な役割を果たすことが重要です。自身の行動が誰かの役に立っていると実感できれば、人生に対する意義や充実感も得られるでしょう。

一方で目的を見失ったり、達成感を感じられないまま過ごしたりすると、無力感や虚しさを覚え「停滞」状態に陥りやすくなります。

この段階で得られる心理的強さは「世話」です。ここでいう世話とは、単に誰かの面倒を見ることではなく、次の世代や周囲の人々に対して関心を持ち、積極的に支えようとする姿勢を指します。
他者を思いやり社会の一員として役割を果たそうとする中で、自己の成長と社会貢献の両立が可能になります。

8.老年期(65歳〜)

老年期の発達課題は「自我統合」です。

人生の終盤に差しかかり、これまでの歩みを振り返りながら「自分は良い人生を送ってきたか」を見つめ直す時期といえるでしょう。

過去の経験に満足し充実感を得られていれば、自身の人生を肯定的に受け止め穏やかな心で老後を過ごすことができます。家族とのつながりや趣味の継続、長年の経験を誰かに伝えることなども、日々を豊かにする大切な要素のひとつです。

一方で過去に対する後悔や喪失感が強くなると、「あのときこうしていれば」といった思いが募り絶望感にとらわれやすくなります。

この段階で獲得される心理的な力が「英知」です。

英知とは、人生経験から得られる深い理解力や洞察力のことです。それは次の世代への助言や支援というかたちで社会に還元され、自身の存在意義や肯定感を支える柱となっていきます。

保護者がエリクソンの発達段階を理解するメリット

子どもの発達を理解することは、適切な接し方や教育方針を見極めるうえで大きな助けになります。

発達段階に応じた支援ができる

子どもがどの発達段階にあり、どのような心理的課題に向き合っているかを理解することで、年齢に適した支援や声かけが可能になります。発達課題に合った対応は、子どもの成長を促進し、問題行動の予防にもつながります。

親子関係が安定する

発達段階への理解があると、子どもの行動や感情に対して過度に不安になったり叱ったりせず、共感的に対応することができます。保護者が安心感を持って接することで、子どもとの信頼関係が深まり安定した親子関係を築くことが可能です。

教育の方針が立てやすくなる

各段階の特性を踏まえることで、今の時期にどのような体験や学びが必要かを見極めやすくなります。たとえば学童期には成功体験を通じて「勤勉性」を育てることが重要です。

このような視点があれば、習い事の選び方や学習のサポート方法にも一貫性が生まれ、家庭内での教育方針もより明確になるでしょう。

まとめ

エリクソンの発達段階理論は、人間の成長過程を8つに分類し、それぞれにおける心理的課題と発達の方向性を明確に示したものです。各段階で直面する「発達課題」と、それに伴う「心理社会的危機」は、子どもの行動や感情の背景を理解する手がかりになります。

保護者がこの理論を理解しておくことで適切な支援を行いやすくなり、子どもの健全な成長を後押しできると考えられています。また子育ての迷いや不安を軽減し、安心して関われるようになる点も大きなメリットといえるでしょう。今後の子育てや教育の場面で、ぜひ活用してみてください。

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執筆:ヒューマンアカデミーこども教育総合研究所 編集部

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