なぜ?プログラミング教育が必修化された理由とは?具体的な教育内容・課題を解説
2025/04/24
小学校から高校まで必修化されたプログラミング教育。その本当の目的は、単なる技術習得ではありません。未来を生きる子どもたちに必要な論理的思考力、問題解決能力、創造性を育むためです。この記事では具体的な教育内容や現場が抱える課題、家庭でのサポート方法について解説します。
そもそもプログラミング教育とは?
プログラミング教育とは単にパソコンの操作を教えるものではなく、子どもたちが社会で活躍するために必要な力を育むことを目的としています。小学校ではパズルやゲームを通じて考える力を養ったり、簡単なプログラミング教材でアニメーションやゲームを作って思考の基礎を身につけたりします。教育はあくまで手段であり、その目的は子どもたちが将来活躍できる力を身につけることです。そうして得た論理的思考力、問題解決能力、創造性などをさまざまな分野で発揮することが期待されています。
プログラミング教育が必修化されたのはいつ?
日本におけるプログラミング教育の必修化は、2020年代に段階的に進められました。まず小学校では、2020年度からプログラミング教育が必修化されました。ここでは主にプログラミング的思考力を養うことが目的とされ、専門の教科などは設けず理科や数学の授業に取り入れられることもあります。その次に中学校では、2021年度からプログラミング教育が必修化されました。ここでは技術・家庭科の「技術分野」において、小学校より高度な内容が扱われます。そして高等学校では2022年度から、共通必履修科目「情報I」においてプログラミングに関する学習が必修化されました。さらに2025年からは大学入学共通テストにおいても「情報I」が追加されています。
プログラミング教育が必修化されたのはなぜ?
現代は情報技術が社会の隅々まで浸透し、技術革新が加速するデジタル社会です。このような中で子どもたちが社会の変化に柔軟に対応していくためには「プログラミング的思考」、すなわち論理的に考え、問題を分析し、解決策を導き出す能力が不可欠となります。
またIT人材の不足は、日本経済にとって深刻な課題です。IT関連ビジネスの今後の傾向からも人材需要の増加が見込まれるのに対して、2015年の時点ですでに人材が不足しており、これからもその差は広がっていくことが予想されています。将来の国際社会に対応するためには、子どもたちのITリテラシーを高め積極的に将来のIT人材を育成すべきという背景もあり、プログラミング教育が推進されているのです。
参考:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果|経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_s02_00.pdf
プログラミング教育におけるメリット
プログラミング教育は単にシステムを作るだけでなく、その過程でさまざまな能力を育みます。ここではプログラミング教育がもたらすメリットについて解説します。
思考力の向上
プログラミング教育では、複雑な課題を小さなステップに分解し解決していく過程を通じて、論理的に物事を考える能力が身につきます。また想定通りに行かない場合には、その原因を特定して修正を試みることで最適な解決策を見つけ出す練習となります。これらを通じて、子どもたちは日常生活やいろいろな学習においても、論理的かつ効率的に問題を解決する考え方を身につけることができます。
発信する力の向上
プログラミング教育は、単に決められたものを全員が同じように作成するだけではありません。学習の過程には、自分の考えやアイデアを形にする創造的な活動も含まれます。ゲーム、アニメーション、アプリなど、自分の想像力を駆使して多様な作品を創りだすことで自己表現の達成を体験し、創造性と表現力を豊かに育んでいきます。プログラミング教育には子どもたちの可能性を引き出して、自由で柔軟な発想を促す効果もあるのです。
将来の社会への対応
デジタル化が急速に進む現代社会では、今後も革新を続ける情報技術の基礎能力を身につけ変化に対応する力が求められます。同時にITビジネス分野も広がり、プログラマーやエンジニアだけでなく、データ分析やデザイン、マーケティングなどのさまざまな分野でプログラミング的な思考や知識が役立つ機会が増加すると見込まれています。プログラミング教育を受けることで子どもたちは変化の激しい社会の中を主体的に行動し、将来の選択肢を広げることが期待されます。
プログラミング教育における課題
学校でのプログラミング教育は子どもたちにとって重要な学びですが、実際の現場においてはいくつかの課題も発生しています。
教育方法と評価
プログラミング教育は小学校において比較的新しい分野であるため、多くの教師が専門的な知識や指導経験を持ち合わせていません。研修の機会も限られており、教師のスキルアップが十分に進んでいない現状があります。またプログラミング教育の目標は、単に知識の暗記やコードを書くことではなくプログラミング的思考を養うことにあります。しかし具体的な学習内容や評価方法が確立されておらず、教育の質にばらつきが生じる可能性があります。そのため現状では、子どもたちの学習意欲を維持し効果的な評価を行うための工夫が求められています。
ICT環境の整備
プログラミング学習にはコンピューターやタブレット端末、インターネット環境などのICT環境が不可欠ですが、学校によっては必要な機材や環境が十分に整備されていない場合があります。これには特に地域や学校間の経済格差も関係しており、ICT環境が整っていない学校では質の高いプログラミング教育を提供することが難しいという課題があります。
学習時間の確保
小学校ではプログラミング教育専門の教科が設けられておらず、限られた授業時間でプログラミング教育を行う必要があります。そのため他の教科とのバランスを取りながら、効果的な学習時間を確保することが課題のひとつです。その問題にも起因して家庭でのプログラミング学習も重要とされますが、家庭での学習環境や保護者の理解には差があり、家庭と学校との連携が難しい場合があります。家庭での学習をサポートするための情報提供や、家庭と連携した学習方法の検討が求められています。
プログラミング教育必修化に備えて家庭で実践できること

プログラミング教育は、学校だけに任せておけば安心というわけではありません。家庭でもできる準備や学習サポートを紹介します。
生活の中の思考を意識
一見ただの遊びにも見えるパズルやボードゲームは、順序立てて考えたり試行錯誤したりする過程で自然とプログラミング的思考を養うのに役立ちます。また料理のレシピを順序立てての説明や、地図を見ながら目的地までの経路を考えるなど、日常生活のなかでプログラミング的思考を意識することも有効です。これらを通して、日常のなかで論理的に考える習慣を身につけられます。
デジタル環境の整備
プログラミング学習アプリやWebサイトは子どもたちが遊びの延長で楽しく学べる優れた教材です。またパソコンやタブレット端末に触れる機会を少しずつでも設けることで、デジタル機器への抵抗感を減らしてスキルを向上させることができます。学習や情報収集に必要なインターネット環境を整え、子どもの年齢や学習内容に合わせて適切な機器を用意することも大切です。
親子での学び
親子で一緒にプログラミング関連のイベントやワークショップに参加したり、学習用ゲームやアプリで遊んだりすることは、子どもの学習意欲を高めるうえで非常に効果的です。親自身も一緒に学ぶことで、子どもとのコミュニケーションを深めることができます。また子どもと一緒に考えることで、親自身のプログラミング的思考の向上にもつながります。
まとめ
プログラミング教育は単にデジタル技術を習得するだけでなく、論理的思考力や問題解決能力、創造性を育むための重要な学習機会です。ここで得た能力は子どもたちが未来の社会で生き抜き、活躍の幅を広げるために役立つでしょう。学習内容の質や学習時間の確保など解決すべき課題は存在しますが、これらを克服しプログラミング教育を効果的に進めるためにも、学校、家庭、地域社会が一体となった取り組みが求められています。