インクルーシブ教育について解説!メリットやデメリット実践例などもご紹介|こども教育総合研究所
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「インクルーシブ教育」とは何か、その基本的な意味から特別支援教育との違い、メリット・デメリット、そして実践例までを詳しく解説。すべての子どもが共に学ぶ場を提供するこの教育方針の重要性や課題について、具体例を交えながら分かりやすく紹介します。

インクルーシブ教育とは

インクルーシブ教育とは、国籍や人種、宗教、障がいの有無などにかかわらず、すべての子どもが同じ場で学び合えることを目指した教育のことです。「インクルーシブ」という言葉には「包み込む」という意味があり、この教育の目的は、誰一人として排除されない環境をつくることにあります。

インクルーシブ教育は、子どもたちの多様性を尊重しながら全員が教育を受ける権利を保障するだけでなく、互いの違いを理解し、共に成長する場を提供します。例えば障がいのある子どもが特別扱いされるのではなく、周囲の子どもたちと同じ環境で学ぶことで、多様な価値観や考え方を共有する機会が生まれます。

1994年に採択された「サラマンカ声明」は、インクルーシブ教育の国際的な普及に大きく貢献しました。この声明では、すべての子どもに教育の機会を平等に与え、特別なニーズがある場合でも通常の学校で対応できる仕組みを整えるべきだとしています。またこの考え方は、国連のSDGs(持続可能な開発目標)が掲げる「誰一人取り残さない」という理念とも一致しています。

インクルーシブ教育を通じて、すべての子どもが共に学び、未来の社会で平等に生きる力を育むことが期待されています。

インクルーシブ教育と特別支援教育の違い

近年「インクルーシブ教育」という言葉が教育現場で注目を集めています。一方、日本では「特別支援教育」も長く実施されてきました。この2つの教育には、それぞれ異なる目的と特徴があります。インクルーシブ教育が注目される社会的背景を探りながら、特別支援教育との役割の違いや、それぞれの意義について詳しく見ていきましょう。

インクルーシブ教育が注目されている背景

インクルーシブ教育が注目される背景には、国連が掲げるSDGsの存在があります。SDGsは「誰一人取り残さない」という理念を掲げ、2030年までに達成すべき目標を設定しています。その中でも、インクルーシブ教育と深く関わっているのが目標4の「質の高い教育をみんなに」です。この目標では、障がいのある子どもや外国籍の子ども、経済的に困難な家庭の子どもなど、教育を受けにくい状況にある人々にも質の高い教育を提供することを目指しています。

日本では、障がいのある子どもが特別支援学校や学級で学ぶ「特別支援教育」が長く行われてきました。特別支援教育は、障がいのある子どもが個々の特性に合った支援を受けられる環境を整えることを目的としています。

これに対してインクルーシブ教育は、障がいの有無や性別、国籍、経済状況などにかかわらず、すべての子どもが同じ環境で学ぶことを目指します。この教育では、子どもたちの多様性を前提とした環境整備や合理的配慮によるサポートが重要です。例えば視覚的刺激に敏感な子どものために掲示物を減らす工夫や、タブレットを活用して学びを支える取り組みなどがあります。

特別支援教育とインクルーシブ教育の大きな違いは「分離型」と「統合型」という考え方です。特別支援教育は、個別に必要なサポートを提供する分離型の教育ですが、インクルーシブ教育は、すべての子どもが同じ場で学び合い、互いの違いを理解し合う統合型の教育です。このような取り組みを通じてインクルーシブ教育は、誰もが尊重される共生社会の基盤を築くことを目指しています。

インクルーシブ教育のメリットとデメリット

インクルーシブ教育は、すべての子どもたちが同じ場で学ぶことを目指す教育であり、子どもたちに多くの利点をもたらします。具体的には以下のようなメリットが挙げられます。

  • 社会性の向上
    多様な背景を持つ仲間と接することで、他者と協力する力や集団での行動力を学ぶ機会が増えます。
  • 共感力の育成
    障がいを持つ子どもや異なる価値観を持つ子どもとの交流を通じて、相手の立場に立って考える力が育まれます。
  • 学習の多様性の促進
    個別のニーズに合わせた教材や指導法を取り入れることで、すべての子どもが学びやすい環境が整います。

これらの取り組みを通じて、子どもたちは幼い頃から多様性を自然に受け入れる心を育み、将来の共生社会の実現に向けた基盤が築かれます。

一方で、インクルーシブ教育には以下のようなデメリットも存在します。

  • リソースの不足
    特別な支援を必要とする子どもをサポートするためには、専門のスタッフや教材が不可欠ですが、その確保が十分でない場合があります。
  • 教師の負担増加
    多様な子どもたちに対応するためには、授業準備や個別対応に多くの時間とエネルギーが必要です。
  • 個別対応の難しさ
    すべての子どものニーズに対応することは難しく、一部の子どもが十分な支援を受けられない可能性があります。

これらの課題を克服するためには、教育現場だけでなく、地域社会や行政機関が一体となって支援体制を整えることが必要です。例えば、特別支援教育の専門家やボランティアを活用することで、教師の負担を軽減しつつ子どもたち一人ひとりに合った支援を提供することができます。インクルーシブ教育の成功には、多くの関係者の協力が不可欠だといえるでしょう。

インクルーシブ教育の実践例

日本国内でも、インクルーシブ教育を実現しようとする学校が増えています。その中でも注目されるのが、広島県福山市の「常石ともに学園」と東京都世田谷区の「HILLOCK(ヒロック)初等部」です。これらの学校は、子どもたちの多様性を尊重し、一人ひとりの個性を活かした教育を行う先進的な取り組みを進めています。

常石ともに学園:異年齢集団で共生を学ぶ場

広島県福山市にある「常石ともに学園」は、2022年に開校した公立初のイエナプラン教育実践校です。イエナプランはドイツで生まれオランダで普及した教育手法で、「対話」「遊び」「仕事(学び)」「催し」の4つの活動を通じて異年齢集団で学ぶのが特徴です。この学園では、子どもたちが自律的に考え多様な人々と共に生きる力を育むことを目指しています。

例えば、低学年から高学年までが一緒に取り組む活動では、年齢を超えて協力し合い、それぞれの得意分野を発揮できる環境が整っています。また授業中に学年の枠を超えて自由に話し合う時間を設けることで、共感力や問題解決力を自然と身につける機会を提供しています。こうした取り組みは、インクルーシブ教育の理念を体現したものといえるでしょう。

HILLOCK初等部:自由と自律を重視した教育

東京都世田谷区に位置する「HILLOCK(ヒロック)初等部」は、2022年に開校したオルタナティブスクールです。この学校では、テストや宿題、ノルマといった従来の枠組みを排し、子どもが自ら学びを選び取る自由な教育を実践しています。その目的は、一人ひとりの子どもがウェルビーイング(幸福)を実感しながら、自分らしく成長していける環境をつくることです。

例えば、授業中に子どもたちが自分の興味に基づいて調べ学習を行う時間を設けたり、障害のある子どもや外国にルーツを持つ子どもが自然とクラスに溶け込めるよう工夫されたりしています。また子ども同士が対話を重ねることで、多様性に対する寛容さや他者を受け入れる心を育む教育が実践されています。

まとめ

インクルーシブ教育は、障がいの有無、国籍、経済状況などにかかわらず、すべての子どもが共に学ぶことを目指す教育方針です。その根底には「誰一人取り残さない」というSDGsの理念や、1994年に採択されたサラマンカ声明の精神が息づいています。この教育は、単なる学校の枠を超え、共生社会の基盤を築くために欠かせない取り組みといえるでしょう。

互いの違いを認め、尊重しながら学び合う環境は、次世代の子どもたちに多様性への理解を深める機会を提供します。一方で、教師の負担や環境整備の遅れといった課題も浮き彫りになっています。これらの壁を乗り越えるには、学校だけでなく地域社会や家庭、政府が一体となり支援していくことが不可欠です。

日本では、個別の教育支援計画や環境整備、専門機関との連携などが実践されていますが、さらなる普及が求められます。これらの取り組みを広げていくことで、すべての子どもが安心して学べる環境が実現し、誰もが自分らしく生きる社会への扉が開かれるでしょう。

インクルーシブ教育は、共生社会の実現に向けた大きな一歩です。障がいの有無に関係なく、すべての人が尊重される未来を築くため、教育の現場から社会全体への広がりが期待されます。

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執筆:ヒューマンアカデミーこども教育総合研究所 編集部

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