夏休みにトライ!デンマーク流・創造力をのばす3つのヒント|こども教育総合研究所
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やっと学校が始まったところなのに、気づけばあっという間に夏休み。今年は多くの学校で夏休み期間が短くなっているのではないでしょうか。遠くには出かけられないかもしれないし、制約もあって、いつもの夏休みより少し退屈かもしれません。

でも、そんな時こそ、ゼロから新しいアイデアを生み出す「創造力(=クリエイティビティ)」をのばすチャンス!今回は、日常の中でクリエイティビティを大事にしているデンマークへの留学経験をヒントに、夏休みに家庭でできるアイデアをご提案したいと思います。

クリエイティビティは誰にでもある!のばすためのヒント

「クリエイティビティ」と言われると、なんだか少し敷居が高く感じるでしょうか。特別な人が持っている才能のような気がしますよね。
でもデンマークでは、クリエイティビティは誰もがもつ素質としてとらえられています。生活の中でも、誰かが工夫して何かをした時などに、“Du er kreativ!!”(クリエイティブだね!!)という言葉を聞いたり、学校の先生にインタビューした時にも、「日々の授業を通して、クリエイティビティを育めるよう工夫している」と聞くことがよくありました。

ここでは筆者のフォルケホイスコーレ※でのエピソードから、クリエイティビティをのばすためのヒントをご紹介します。

※フォルケホイスコーレとは?
デンマークを始めとする北欧諸国にある全寮制の学校。生徒と先生が共に暮らし・学ぶのが特徴で、様々な価値観に触れ、自分自身や将来について考えることができる北欧独自の機関。期間は通常数ヶ月から半年間ほど。現地では大学に入る前の若者が入学することが多く、ここ数年で日本からの社会人の留学生も増えている。


フォルケホイスコーレでは、生徒が自主的に企画して、様々なイベントが開催されます。ある時、パーティの企画チームの一員になった私は、ミーティングに呼ばれました。パーティのテーマについての話し合いが始まり、みんな自由にあれこれとアイデアを出し合います。

「スポーツをテーマにするのは?」「異文化を取り入れて、芸者パーティは?」「何かのコスチュームを着るのはどう?」「ルームメイトでペアになって何かしたい」などなど。ポンポンと出てくるアイデアを、まとめ役の生徒が紙に書き留めます。私も少しアイデアを出してみると、「いいね!」と好感触の反応をしてもらい、少しほっとした気持ちに。

たくさん出たバラバラのアイデアをどうやってまとめるのだろうと思っていると、まとめ役の生徒が、出ているアイデアを一通り読み上げて、整理に入りました。多数決をする様子はありません。一つひとつのアイデアについてみんなで話し始めます。「ルームメイトでお揃い風のコスチュームを着ると面白いかもね!」と、コスチュームの案とルームメイトの案が合体して、みんな賛成のようです。

肝心のテーマについては、スポーツ案・芸者案など、どれも面白そうで一つに決められません。すると、「ルームメイト毎に違っても良いんじゃない?そうすると、今出ている案を一つに決めることもないし、それぞれが好きなのを選べるよね!」とある生徒が言いました。「テーマを一つに決める」という事に縛られていた私には思い浮かばなかった、「テーマは各々が自由に選べる」という提案でした。

みんな彼女に賛成。その意見に付け足すように、「ルームメイト同士で決めたテーマに部屋も飾り付けて、ルームツアーにしよう!」「飾り付けコンテストでベストルームを表彰しよう!」など、さらに具体的に催しが決まっていきました。

このほんのちょっとしたやりとりの中にも、デンマークで大事にされているクリエイティビティを引き出すコツがちりばめられています。

<ポイント①>否定せずにまず受け止める

パーティのアイデア出しでみんなが躊躇せずにたくさん発言できたのは、自分の意見が否定されないという安心感があるからでした。一つひとつの意見をその都度批評せず、まずはお互いの案を受け止めていました。
他の人が出したアイデアに、違和感を感じることや納得できない時があっても、すぐに否定しない。「その人の経験してきたことや環境によって同じ物事に対する見方は違うもの」という前提を持っていれば、少し立ち止まって、他の人の考え方を寛容に受け入れられるのですね。

<ポイント②>物事を様々な角度から見る

パーティの話し合いでは、テーマについて、着る衣装から考えた人、スポーツや芸者などあるカテゴリーから考えた人、ルームメイトというチーム分けから考えた人がいました。
同じものを前にしても、一人ひとりの視点は異なります。どのように見て考えるかに正解はありません。一人ひとりが自分の視点を大切にする事を少し意識してみると、大きな声に飲み込まれることなく、実り多い議論ができるのではないでしょうか。また、他の人を参考にしても良いので、少し別の角度から考えようとしてみることで考えの幅が広がりそうです。

<ポイント③>アイデアを組み合わせる

たくさんのアイデアが出て、そこから決める段階に入った時、多数決はせずできるだけ色々なアイデアを反映したものにするように話が始まりました。結果として、「ルームメイト」「コスチューム」「各テーマの案」を組み合わせて、元々なかった新しいパーティのテーマが決まりました。
できるだけ皆が納得できる結論を出せるように、とことん向き合うのがデンマーク流。対話の中で、それぞれの提案者がどういう想いでアイデアを出したのか、みんなが共有できるから、内容の詰まった新しい案を創り出すことが可能なのだと思います。

では、家庭でどのように取りいれたらいいでしょうか。お子さまとも手軽にできる例をご紹介します。

その1・我が家の夏休みオリジナルプランを立てよう

夏休みに行きたい場所・やりたいことを、家族みんなで話し合ってみましょう。夏だから、時間があるからという制約は取り払って、気軽にたくさん出すことが大切です。例えばポストイット一枚にアイデアを一つ書き、思いつくだけ書き出してみましょう。書き出したら、お子さまだけでなく、おうちの方のやりたいこともきちんと発表します。「ん?」と思うような希望があっても、一旦うなずいて受け止めてください(①否定せずにまず受け止める)。

どうしてそこに行きたいのか、どうしてそれがしたいのか、じっくり話をしてみましょう。自分はこうだからここに行きたいけれど、ママやパパはまた違うふうに考えているんだ、と、少し違う角度から考えるきっかけになるかもしれません②物事を様々な角度から見る

アイデアが全部出たら、今度は家族全員の希望がかなうようなプランを考えてみましょう。もしかしたらお子さまが行きたい場所で、パパのやりたかったことができると気づけるかもしれません。誰か一つの案を選ぶのではなくて、あえてみんなのアイデアを掛け合わせてみることで、思いもよらない画期的なアイデアが見つかるかもしれません③アイデアを組み合わせる

さてこれで、ガイドブックやインターネットには載っていない、我が家だけの夏休みプランのできあがりです!

その2・自由研究にも!写真で作る色のパレット

ちょっとしたお出かけやお散歩の際に、お子さまにカメラを持たせて「一日カメラマン」をさせてみましょう。古いスマホなどで十分です。「何でも良いからたくさん写真を撮ってみよう」「お母さんもカメラマンになるよ」「目指せ100枚!」などと盛り上げながら、おうちの方も写真を撮ってみてください。

家に戻ったら、撮影した大量の写真を一緒に見てみましょう。同じ一日を過ごしていても、撮りためた写真はそれぞれきっと違うはずです。

たとえばこの写真たち

右と左で別の人がそれぞれ撮影した写真たち

左の人は、ちょっと変わった形のピンクのベンチや青いポストを撮影していますが、一緒に散歩していた右の人はその写真を撮らず、自転車やバイクの写真を多く撮っているようです。写真を見ながら、「これには私は気付かなかった」「なんでこれが気になったの?」など、お互いの感想を言いあうと、同じものを目にしていても、興味を抱くものは人によってこんなにも異なるのだと実感させられますね(②物事を様々な角度から見る)

一通り目を通したら、写真を色ごとにカテゴリー分けしてみましょう。
ここでは、二人分を合わせて色ごとに三色に並べてみました。写真の中にはたくさんの色が入っているので、どこに注目するかはあなた次第です。

これで自分だけのパレットの完成です。各色を数枚ずつプリントしてアルバムにしたり、色ではない観点に着目して写真を分類してみても面白いですね。自分なりの方法でカタチにすることができれば、自由研究にもなります。撮った写真の中に特定の色や物の写真が多ければ、隠れたお子さんの感性に気づけるかもしれません。

フォルケホイスコーレの多くには、写真の授業があります。私が受けた授業では、プロのように美しい写真を撮るよりも、むしろ自分の中にある感性や考えを、写真を通じてどう表現するか、ということが求められました。写真を撮るという行為は、その人自身を映し出します。どんなことに興味を持ちシャッターを切りたいと思うのか、自分自身やお子さまよく知るきっかけにしてみてください。自分の感性や視点のアンテナを常に持っておくことが、クリエイティビティを発揮して何かを成し遂げる大きな助けとなります。

最後に

この記事では、「クリエイティビティ」をキーワードに夏休みの過ごし方について考えてみました。
クリエイティビティを発揮する第一歩は、自分のオリジナルな視点で気づきを得て、アイデアを出してみること。今回ご紹介した3つのポイントと、家庭でできるアクティビティがヒントになれば嬉しいです。


本記事の筆者:阿部彩乃(あべ・あやの)
大阪大学外国語学部デンマーク語専攻卒。デンマーク社会ゼミに所属し、日本とデンマークの初等教育におけるクリエイティビティをテーマとした。在学中にデンマークのフォルケホイスコーレへの留学を経験。現在は旅行会社勤務。「北欧の教育・学び リラ・トゥーレン」で出会った執筆メンバー。 

<北欧の教育・学び リラ・トゥーレン>
リラ・トゥーレンは、一人ひとりの創造性と多様性をひきだして活かす北欧の教育をヒントに、これからの学びのあり方を対話しあう共創型情報プラットフォームです。北欧留学経験者/予定者、北欧在住者、学生、教育関連企業、出版社、テーマに関心をもつ人がコラボし、参加者と運営者の間を行き来しつつ新しい企画を生み出しています。本記事は、当プラットフォームを介して出会ったメンバー複数名で企画・執筆しています。

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執筆:阿部彩乃(あべ・あやの)

阿部彩乃(あべ・あやの)

大阪大学外国語学部デンマーク語専攻卒。デンマーク社会ゼミに所属し、日本とデンマークの初等教育におけるクリエイティビティをテーマとした。在学中にデンマークのフォルケホイスコーレへの留学を経験。現在は旅行会社勤務。「北欧の教育・学び リラ・トゥーレン」で出会った執筆メンバー。  <北欧の教育・学び リラ・トゥーレン> リラ・トゥーレンは、一人ひとりの創造性と多様性をひきだして活かす北欧の教育をヒントに、これからの学びのあり方を対話しあう共創型情報プラットフォームです。北欧留学経験者/予定者、北欧在住者、学生、教育関連企業、出版社、テーマに関心をもつ人がコラボし、参加者と運営者の間を行き来しつつ新しい企画を生み出しています。本記事は、当プラットフォームを介して出会ったメンバー複数名で企画・執筆しています。

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