~副所長訪問記~「AI企業でビジネス体験」高校生の最新インターンシップ|こども教育総合研究所
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~副所長訪問記~「AI企業でビジネス体験」高校生の最新インターンシップ

2020/03/26

今回は園田氏が代表を務めるAI企業・ウタゴエ株式会社にて、田園調布雙葉学園の高校3年生がインターンシップをするとのことで密着取材をしてきました。
AI技術を活用して、実際に新しいプロジェクトを生み出す際のフローを女子高校生が体感するという今回の新たな試み。ITビジネスの現場で、彼女たちはどのような学びを得るのでしょうか。

ウタゴエ株式会社
「生活を豊かにする」を企業理念に、最新の情報・通信技術を用いて新しい技術・価値を創造。代表取締役社長の園田智也氏は、1997年に早稲田大学在学中に機械学習を利用して世界初の音楽検索エンジンを開発以降、一貫してAI・IT領域の研究と事業開発を進めている。


この日集まったのは、東京都世田谷区にある幼小中高一貫校の田園調布雙葉学園・通称「デンフタ」の高校3年生の女子生徒7名。情報科主任の小林先生より「AI企業でのインターンシップができないか」というお話をいただき、ウタゴエ株式会社の協力のもと実現しました。

さまざまな設備が揃ったウタゴエ株式会社の関連会社オフィス内を見学した後、機械学習エンジニア・細野氏が、ITビジネスのクリエーションフローについて説明。約5時間のなかでのインターンシップとなるため、企画を生み出すうえで要となる「Planning:企画」→「PoC:検証(注1)」→「Requirement Definition:要件定義」にスコープを絞り、企画の検証と改善を考える「PoC」を中心に、アイデアをブラッシュアップするというものでした。
最後には自分たちの企画を3分でプレゼンしてゴールという、高水準なインターンシッププログラムです。

(注1)PoC:Proof of Conceptの略で「概念実証」と言います。新しいプロジェクトが実現可能かどうかを検証する行程のことです。

さらに今回のインターンシップでは、AI技術のなかでも「マシンラーニング(機械学習)」の技術を使って新たなプロジェクトを生み出し、実際にビジネスに落とし込む際の手法や考え方を体験することが目的です。新技術を活用しながらITビジネスのクリエーション現場を体感します。

マシンラーニング(機械学習)とは、AI(人工知能)分野における技術のひとつで、コンピュータが物事の特徴やルールを理解するための学習方法です。
開発者は、コンピュータに学習させたい物事に対する情報を与え、データと分類の仕方を教えることで、コンピュータが新たなデータに対する正解を予測できるようになります。蓄積させたデータを解析することによりアルゴリズムを抽出できるようになる、というこのプロセスは、人間が学習するメカニズムともよく似ています。
身近な事例では、ECサイトでのレコメンド機能やウェブサイトでユーザーの趣味嗜好に合わせておすすめ記事を表示する、などがあります。学習させた過去の経験則に照らし合わせて、コンピュータ自らが答えを導きだせるようになる、というのがマシンラーニングの特徴です。

ここでは、マシンラーニングの概念を簡単に理解するために、プログラミング学習でおなじみのScratch(スクラッチ)から出ている拡張機能「ML2Scratch」を使ってビジネスプランをつくっていきます。

「ML2Scratch」は、Webカメラでいくつかの画像を撮り、ラベルを付けて学習させることによって、似たような画像を見せた時にも画像を分類することができるようになるというもの。
たとえばまず始めの練習として、グー・チョキ・パーをML2Scratchに学習させてみます。Webカメラでさまざまな角度を撮影し、グー・チョキ・パーそれぞれの特徴を学習させます。枚数は多ければ多いほど精度が上がりますが、今回はそれぞれ20枚ずつ撮影。こうして分類を学習させた後、Webカメラに「グー」を映してみるとML2Scratchで「グー」と判別できるようになるのです。

これらの仕組みを一通り練習したら、次はビジネスプランを考えるクリエーションパートです。今回は2,3人のグループに分かれて、それぞれがML2Scratchを使って”あったらいいな”をどのように実現するか話し合いました。

東京都渋谷区のオシャレなビルで最新のビジネス環境を体感

自分たちが普段の生活のなかで困っていること、解決したいこと、必要なものは何かを挙げるチームや、学校の先生から聞いた話をもとに、既存事業に付加価値をつけようと考えるチームなど、それぞれ幅広い分野からアイデアを考えて話し合います。途中、アイデアに行き詰まり変更を加えていくなかで、どんどんと良いものにブラッシュアップしていく様子が見てとれ、これぞまさしく今回のインターンシップでのキーポイントとなる「PoC」であるということが分かりました。
実際の企画でも、その後の要件定義で改善要素や不要なものを削除し、リリースに結びつけていくという作業が発生するとのことでしたが、生徒たちはそれらを短期間の間で形にしていきます。この順応力の高さに、大人たちも驚嘆です。

1時間のランチで談笑したのち、PoCで企画が固まったら、いよいよML2Scratchを活用して企画を形にしていく作業です。学習させたいものをWebカメラで撮影し、コンピュータが判別できるようにしていきます。
今回はあまり時間のないなかでありながらも、しっかりと正誤表をつくり精度を確認するグループもありました。

判別の精度を確認し完成度を高めていく

一通りデータを学習させたら、最後にプレゼン資料を作成。各チームの発表タイムです。

最初のチームは、朝の時間を効率的に短縮するためのアイデア。寝癖の酷さを三段階に分類し、寝癖を直すのにかかる時間を提案するという新システムです。やることの多い朝の作業を効率良く進めるためにどうしたら良いか、を話し合って生まれました。
他のチームの生徒たちにも協力してもらい、それぞれの髪型で起こりそうな寝癖のパターンを撮影しデータを蓄積することで、寝癖をレベル別に分類するという手法を編み出しました。
起きてすぐ自分の髪型を撮影し、直しにかかる時間を算出。実際にかかった時間をフィードバックすることでアプリの精度を上げるという手順で運用のフローまで考えました。

女性ユーザーに絞り、アプリで提供することを想定

データ数を集めればほぼ正確な数値を集められることまで検証し、発表しました。
講評では、毎日の課題から改善点を見つけるとビジネスとして成功しやすいこと、女性向けの新規事業として事業化できそうだと高評価でした。

続いてのチームは、学習サポートAIシステム。授業中の生徒たちの様子を撮影することにより、その生徒の理解度を分析するというものです。授業中は眠くなるなどの課題があり、40人などのクラス単位で見た時にどこまで理解できているかが判別しにくいのではということで考えました。
タブレット学習を前提として、表情や態度をカメラで撮影することで、生徒の状態を大まかに4パターンに分類。その時の態度により「この調子!」や「頑張ろう!」などのコメントが出るように設計しました。また、授業中に「理解した」「理解していない」をフィードバックすることにより、自分の理解度を可視化することや先生の授業補足に役立てるのではと考えたそうです。

学校だけでなく塾などにも活かせるアイデア

理解度を分析し学習効率を上げることで、テスト前の勉強対策や自分に向いているものを判別、将来の進路にまで活かせるというアイデアでした。
講評では、テスト前に理解できなかったポイントを整理できる良いアイデアであり、最終的に生徒が利益を得られるというところが良く考えられていると高評でした。

最後のチームは、婚活イベントについて、もっと良くできないかと考えたユニークなアイデア。婚活イベントでの成功率を上げるために、参加者の表情から相手に対する好意の有無を判別できるようにし、自分に興味を持っている人が分かるようになるというものでした。
AIは正確な数値が出せる安心感があることと、人間には分からない細かな動きを機会が推測できるという特徴を持っていることから、AI×婚活という組み合わせを考えたそうです。

既存事業に付加価値を与えるユニークなアイデア

笑顔の回数を判定することで相手に対する好意を分析し、アプローチに対してアドバイスをしてくれる機能を設計。変数を“脈あり度”と設定するなど、発表中に笑いが起こる和やかな発表となりました。AIというと温かみのないものに感じるが、人と人をつなぐことに活用することもできるのではと締めくくり、拍手が起こりました。
婚活イベントだけではなく就活など、指標を変えることでさまざまなシーンでも活用できる素晴らしいアイデアとの講評でした。

与えられた3分という短い時間のなかで発表する難しさも体感し、ピッチというIT業界のプレゼンテクニックを学ぶ機会にもなりました。全体の講評として、生徒さんの完成度の高さと、実際のプレゼンでは英語でもできるようになると世界にアピールしていくことができますよ、と園田氏からのさらにハイレベルな提案も飛び出しました。

さらに、最後には生徒からのディープラーニングに関する質問が飛び出し、急きょ園田氏の特別講義を開催。ディープラーニングの歴史や主要人物の解説など、白熱した授業となりました。

ビジネスにおけるIT活用の現場を体感することで、普段何気なく使っているAI技術を「学ぶ」だけではなく実際に「使う」ことを意識する貴重な機会となった今回のインターンシップ。AI技術を活用することで、世代に関係なく新しいアイデアを形にしていくことが可能だと実感し、生徒だけでなく保護者世代の我々としても学びを得る契機となりました。

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