グローバル教育のその先は?これからの世界で活躍できる職業5パターン
2019/10/29
2020年度から、小学校では英語が必修化し、「聞く」「話す」だけでなく、「読む」「書く」が加わった4技能の学習が重視されるようになります。また、新しい取り組みとして、プログラミングを通じて、論理的な思考を伸ばす教育が取り入れられるようになりました。まさに今、国際的に活躍できる人材を育てるため、日本の教育は大きく変わりつつあります。そういった教育を受けた子どもたちは、将来どのような職業につき、どう国際社会を支えていくのでしょうか?ここではこれからグローバルに活躍できると考えられる職業5つのパターンをご紹介します。
国際ビジネス
グローバル企業勤務
- 貿易関連業務…など
「海外に関連する仕事」と言えば、まず商社などで、世界中を飛び回って商品の情報を収集し、世界各国にいる、売り手と買い手をつなぐ「パイプ役」の仕事や、貿易を行う企業で、輸出入に関わる書類作成や調整業務を行う「貿易関連事務」などを思いつくのではないでしょうか。多国籍/外資系企業では、国内外のクライアントとやり取りをしたり、多国籍なチームとともに仕事することが多くなります。必然的に毎日英語や他の外国語漬けという場合も多く、英語能力に自信のある人にとっては、能力を十分に活かすことのできる環境といえるでしょう。また、貿易を行う企業において、輸入・輸出に関する際に必要な書類作成や調整業務を担当する「貿易関連業務」でも、英語などでの書類作成が仕事となるため、外国語の能力が求められてきます。
日本国内のビジネスが飽和状態にある現在、海外へ積極的に進出していく企業が増えているため、今後グローバル企業に勤務する人や貿易業務の担当者は増えていくと考えられます。その際、言語能力や高いコミュニケーション能力、どんな環境にも飛び込んでいける旺盛な好奇心は重要になりますが、それ以上に意識するべきなのは「論理的な主張ができる能力」ではないでしょうか。
日本では伝統的に、謙虚さが美徳とされてきましたが、グローバルに展開する企業ではマイナスとなってしまう場合があります。多様な国、地域の人と仕事をする際には、他の人と同じ意見だとしても「私はこう思う」と主張をすることが求められてくるのです。
出身地や文化、生活背景の異なる人では、考え方も変わってきます。それぞれの価値観で非合理的な主張をしてもお互いに理解することが難しいため、文化的背景がバラバラになるほど、論理的であることが求められるのです。例えば、世界で読まれている経済雑誌や新聞の文章と、日本の新聞の社説などを比べると、書き方に大きく違いがあることがわかります。英語が論理的な言語であるためともいわれますが、そもそも論理的に書かないと、多文化背景を持つ読者に伝わらない、というのが大きな理由なのではないでしょうか。グローバルな環境で働くことを目指すのであれば、今日から「自分の意見をロジカルにまとめる」トレーニングをしてみてもいいかもしれませんね。
言語/語学
- 通訳
- 翻訳業…など
通訳者は会話の言語変換を、翻訳家はテキストの言語変換を行う仕事です。英語を使った仕事として人気のある職業ですが、外国語の普及や、人口知能(AI)の台頭で、一時は存続が危ぶまれました。しかし、AIによる代替が難しいことが徐々に認知されてきたことで、ふたたび注目を浴びています。
留学や習い事としての英会話など、昔と比べて外国語が身近になったこともあり、英語などの外国語を話せる人の数は増えてきました。しかし、海外進出する企業も増えている近年の日本で、海外の企業とのやり取りが盛んになったことで、ビジネスシーンでのニーズがますます高まり、「通訳」業務が求められる場面も増えてきています。もう一方の、文書や書物、映画を返還する「翻訳」業務も、AIの普及によって、翻訳の担い手が代替されると考えられていましたが、AIでは前後の文脈を理解したうえでの翻訳ができないため、今ではAIが普及すればするほど、人でなければできない人気職業として生き残るのでは?と注目されています。
どちらも文系の職業で、語学やコミュニケーション能力が優れていれば良いと思われがちですが、近年通訳者や翻訳家に求められるクオリティや対応スピードは年々高度化しています。そのため、これまでよりも「スピード感をもって情報を処理する能力」が求められる傾向にあります。
通訳者や翻訳家になるためには、「言語理解」「コミュニケーションスキル」「素早い情報処理能力」など、高いスキルが求められますが、最新技術でも簡単には代替できないことから、これからも長く必要とされる職業なのではないでしょうか。
公務員
- 外交官/外務省職員
国際公務員/国連職員…など
外交官とは、国を代表し、諸外国と政治・経済・文化面の交渉や交流を行う国家公務員です。また、国際公務員とは、国際連合や関連機関に所属し、紛争、人権、貧困など、世界の問題の解決に取り組む職務を担っています。これまでも「MDGs」や「SDGs」のように、地球規模の問題に対して、国を超えた対策が講じられてきましたが、これからはよりいっそう、国の垣根を超えた取り組みが増えていくと考えられます。
外交官や国際公務員になるためには、まず語学力が求められます。特に国連職員の場合は、業務で使用するフランス語と英語以外に、他の言語も勉強し、使えるとなれば選考時にプラスになるとされています。しかし、語学力だけを伸ばせば良いのではなく、膨大なデータを読み解き、論理的に考えることのできる力も、実務を行う上で必要不可欠になります。言語能力が高いだけではなく、データをもとに物事の分析ができるような人が向いているのかもしれませんね。海外で人のために働きたい、自国の発展や国際社会のためになる仕事にチャレンジしたい方は、データ分析のスキルも身につけるのが良いのかもしれません。
研究職
- 民間企業の研究部門
- 公的研究機関、大学の研究者…など
民間、公的機関に関わらず、理系の学生に人気のある職業です。研究者の資質として、まず必要なのが探究心ではないでしょうか。探究心とは、物事の意義や本質を深く掘り下げようとする姿勢であり、研究テーマを考え、実験の試行錯誤をかさねるうえで必要になります。子どものころから「どうしてこうなるの?」「もっと詳しく調べたい」という気持ちが強かった人が、研究者に向いていると言えます。
また論理的な思考も研究者にとっては重要です。研究をするうえではインスピレーションも欠かせませんが、実験や分析したデータを整理するには論理的な思考が必要になります。長年研究者たちが研究したものでも、解明されていない謎が多くあります。誰も正解がわからず、解明されない可能性があるものでも、あきらめずに根気よく仮説を立て続けることはもちろん、仮説を裏付け、想定とは違う結果が出たときにまた新しい仮説を立て直す能力が求められます。
近年、ノーベル賞の受賞などもあり、研究職への社会的な注目が集まっていることで、世界的に評価される研究は様々な国の研究機関と協力して行われることが多いことが広く知られるようになりました。今後はさらに多国間での研究が活発になると考えられるので、研究職は今後さらに世界で活躍する職業のひとつであると言えるのではないでしょうか。
航空業界
- パイロット
- キャビンアテンダント
- 航空整備士
飛行機が主要な流通手段になったことで、飛行機を操縦するパイロットが著しく不足しています。特に日本の航空業界では、バブル期に大量採用したパイロットが2030年ごろに退職を迎えることで、旅客機を十分に飛ばせなくなる問題に直面しています。同じように、格安航空会社(LCC)の台頭や、航空旅客の増加、就航地や就航便数の拡大によって、キャビンアテンダントの人手不足に悩んでいる航空会社も少なくありません。また、航空機を整備する整備士の人材不足も深刻です。専門性の高いパイロットや航空整備士は、すぐには育てられないため、現在も養成機関の定員拡大や、学生への奨学金制度を創設するなど、産官学を挙げた取り組みが大至急進められています。
現在、世界中で必要とされている職業のひとつであるパイロットと航空整備士ですが、どちらも英語でのコミュニケーション能力だけではなく、素早い情報処理能力や判断力が求められています。パイロットの場合は、機器の故障やエンジントラブル時の対応方法、突然の気象変化があったときにどう判断するかといった、幅広い知識と判断力が必要になりますが、一方で航空整備士でも、不具合が生きてから整備するのではなく、不具合が起きる前に対処する観察力や分析力が重要です。
これからも移動手段や輸送手段としてニーズが高まっていく航空業界において、パイロットやキャビンアテンダント、航空整備士はますます世界で求められる人材になっていくことは十分に考えられます。
5つのパターンの職業を紹介しましたが、今も未来も世界で活躍できる職業では、「外国語でのコミュニケーション能力」「論理的な思考」が不可欠になるようですね。高校生や大学生、大人が就きたい仕事を選ぶ際はもちろんですが、将来の選択肢を大きく広げるためにも、子どもの時からでも「ロジカル思考」「外国語のコミュニケーション能力」を伸ばす教育を行うことが重要なのではないでしょうか。