子どもと美術鑑賞をしよう!【親子でする対話型鑑賞のコツ】|こども教育総合研究所
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最近、様々な分野においてアート人気が高まってきていることをご存知でしょうか。教育の分野では、論理的思考力を高められる「STEM教育」にアート(Art)の「A」を加えて「STEAM教育」と呼ばれることも増えてきました。(「Art」には、芸術的な意味合いに加えてリベラルアーツなども含み、よりクリエイティブな教育としての広がりを見せています。)また、ビジネスの世界では、既存の枠組みに捉われず、アーティストのように自由な発想で物事を考える「アート思考」も注目されています。今回は、普段の生活にアートを取り入れる活動の1つとして、アメリカの小学校で芸術教育にも取り入れられている「対話型鑑賞」についてご紹介します。


「対話型鑑賞」とは?その良さとは?

対話型鑑賞は、1つの作品の感想を大勢の人と言葉で共有し、対話をしながら鑑賞をする芸術鑑賞の方法です。一般的に芸術鑑賞とは、作品の持つ背景や作者の意図を読み解くため、専門的な知識が必要と思われがちですが、対話型鑑賞では、作品を見た人が感じたことを自由に伝える、ということに重点が置かれます。そのため、対話型鑑賞に美術の専門知識は必要なく、誰でも気軽にできる新しい鑑賞方法と言えます。

親子で対話型鑑賞を行うことの良さは、大人と子どもが一緒にアートを楽しめるだけではなく、対話を通じて子どもの様々な力を伸ばすことができるところにあります。対話を通して、他人の意見に耳を傾ける機会を作ることで、「何かを解釈することに正解は無いこと」や「他人の考えを受け入れること」が実感でき、子どもの価値観を広げることにつながるでしょう。

また、思考力や表現力が磨かれることも、対話型鑑賞の魅力の1つです。質問に答えながら作品の鑑賞を続けるので、普段より深く考える機会が増えます。子どもは、作品を観て感じたことを言葉で伝える必要がありますが、考えを適確に伝えることは大人でも容易ではありません。自分自身の考えと向き合い、本当に伝えたいことが何なのかを考え続ける時に、思考力が発揮されます。そして、考えたことを他の人に説明する時、相手にきちんと伝わるように言葉や伝え方の工夫をするようになるので、思考力と同時に表現力も豊かになります。

子どもと対話型鑑賞をする方法とコツ

対話型鑑賞では「進行役」と呼ばれる人が作品をよく見て考えることを促しながら対話を広げ、鑑賞を深めていきます。子どもと対話型鑑賞をする際は、大人が進行役になって、子どもが楽しく知的に鑑賞できるように手伝ってあげましょう。

子どもと行う対話型鑑賞の方法

  1. 対話のテーマとなる作品を1つ決める
  2. 数人でテーマの作品を鑑賞する
  3. 進行役(おうちの方)が参加者に「この作品には何が描かれているかな?」「それはどうしてかな?」など、質問を投げかけながら対話を始める
  4. 進行役(おうちの方)が参加者に質問を投げかけながら対話を始める

子どもと対話型鑑賞をする、と言っても、恥ずかしがって発言をためらってしまう子もいるかもしれません。そんな時は、発言しやすい雰囲気を作ってあげましょう。「大人が理解している」ということを、子どもにも分かりやすい動作で示すと、安心して考えを言ってくれるかもしれません。

子どもが恥ずかしがって話してくれないときは…

  • 子どもの発言に相槌をうつ
  • 発言内容を反復する
  • 子どもの表情をミラーリングする

また、子どもの考えや言葉が端的で対話が進まない、ということもあるかもしれません。そんな時は、親から質問を投げかけることで、作品をさらに読み解けるように手助けをしてあげましょう。例えば、作品の「見方を変える」質問は、新しい視点での鑑賞に導いてあげる時に効果的かもしれません。

子どもとの対話が深まらないときは…

  • 「いつ」…この作品の中の(季節/時間/時代)はいつかな?
  • 「どこで」…これはどこ(場所)かな?
  • 「誰が」…この人は誰だろう?この○○を持つのはどんな人かな?
  • 「何を」…この作品には何が描かれているかな?

子どもの考え方をより深めたいときには、「なぜなぜ質問」が役に立ちます。子どもに「どうしてそう思ったの?(なぜ)」と繰り返し聞くことで、思考力や想像力を引き出しながら、対話型鑑賞を進めてみましょう。

最後に、対話型鑑賞の題材とする作品の探し方です。「アート」と一概に言っても、様々なジャンルがあり、子どもには難しい作品もあります。題材の美術作品を選ぶ時は「子どもが考えやすいかどうか」を意識して、物事がはっきりと描かれてわかりやすい作品や、ストーリー性のある作品を選んでみましょう。例えば、風景や人物、動物がテーマの作品だと、子どもも親しみやすく、積極的に発言してくれるかもしれません。美術館や博物館のなかには、公式サイトで収蔵作品を公開し、無料でダウンロードできるところもあるので、活用してみても良いですね。

子どもに理解されやすい芸術作品の例

Vincent van Gogh, 'Wheat Field with Cypresses'(1889)(メトロポリタン美術館より引用)

Pieter Bruegel the Elder, 'The Harvesters'(1565)(メトロポリタン美術館より引用)

いろいろな解釈ができる美術鑑賞は、子ども一人ひとりの想像力を豊かにしてくれます。作品の見方は本人の年齢や経験から影響を受けるので、時間をおいて前と同じ作品を選んでみると、作品の見方の変化から成長を感じられるかもしれません。

手軽に芸術鑑賞をしよう

きちんとした美術作品がないと対話型鑑賞をするのは難しいのでは?と考える方も多いのではないでしょうか。実は、美術館に足を運ばなくても自宅や近所で簡単に行うこともできます。例えば、自宅でアート雑誌や図録を机の上に開いて鑑賞したり、インターネットで有名な美術館の公式サイトの作品を探してみるのも良いでしょう。散歩中やお出かけの時にも、公園の銅像やモニュメントなど公共にあるアートを使うことで、簡単に対話型鑑賞を始めることができます。子どもも、会話の延長として楽しく考えを話してくれるかもしれません。また、子ども向けの対話型鑑賞プログラムを行う美術館も全国各地にあります。対話型鑑賞を上手くやる自信がない、という方は親子で参加してみるのも1つの方法です。

親子での対話型鑑賞は、子どもの数だけ作品の見方や考え方があり、対話を通して子どもの成長を感じられる良い機会にもなります。おうちで楽しく過ごす時間に、対話型鑑賞を取り入れたり、久々のお子さまとの外出で美術館に足を運び、アートの時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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執筆:ヒューマンアカデミーこども教育総合研究所 編集部

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