「“プログラミング×工作”で楽しく学べる製品を」株式会社スイッチエデュケーションCTOに聞く製品開発の秘密|こども教育総合研究所
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「“プログラミング×工作”で楽しく学べる製品を」株式会社スイッチエデュケーションCTOに聞く製品開発の秘密

2020/02/17

株式会社スイッチエデュケーションは、子ども向けマイコンボード[micro:bit]につないで遊べる様々なモジュールを開発・販売しています。安全でわかりやくすく手頃な価格の製品は、子どもが楽しみながらプログラミングを学ぶのにうってつけ。製品開発に携わるCTO宗村和則氏に、スイッチエデュケーションの製品づくりについてお話を伺いました。


宗村氏のご紹介

宗村和則(そうむら・かずのり)氏

株式会社スイッチエデュケーションCTO。製品開発にも携わる。
工業高校を卒業後、工学系の大学に進学。電子機器などのパーツショップに勤務した後、株式会社スイッチサイエンスにエンジニアとして就職。
株式会社スイッチエデュケーションが立ち上がると同時に移籍。創業時から小室真紀代表取締役の右腕として会社の発展に尽力。


―株式会社スイッチエデュエーションの主力製品にはどのようなものがありますか?

一番たくさん出ているのは、子ども向けのマイコンボード[micro:bit]です。でも、それが一枚あってもできることは限られているので、[micro:bit]につないで遊べるモジュールも販売しています。[micro:bit]の入門キットもあります。

―2週間に一度のペースで製品をリリースしていると伺いましたが、かなりのスピードですよね。

2週間に一度と言っても、仕入れてそのまま売るような小さい部品も含めての「2週間に一度」です。スピーディに物事が進むので、商品のラインナップは充実してきていると思います。

大手企業だと様々な審査をクリアしないとリリースできない場合もあるので、どうしてもスパンが長くなってしまいます。弊社は自由な社風ですし、小回りがききますので、新しいアイデアにすぐ挑戦できるのが良い所だと感じています。

―製品はどのような流れで誕生するのでしょうか?

まずは「ベース」となる製品を作ります。どこの製造会社でも必ず作っているであろう基本的な最小限のパーツです。シンプルなものを作って、すぐ製品としてリリースしています。普通の会社だったら、ひとつの部品を作るにしても、その部品からどうやって他の商品を派生していくか将来的なことを考えて製品化していると思います。弊社の場合はあまり難しく考えず、すぐに商品化して販売しています。ベースとなる製品を作った後で、「こういうものを追加したら楽しいんじゃないか、便利なんじゃないか」と拡張するものを少しずつ継ぎ足していく感じです。

―まずはシンプルなものを作って、そこからどんどん想像を膨らませていくのですね。

他にも、同僚との何気ない会話から発想を得る場合もあります。例えば「お掃除ロボット買ったよ」「へぇ、[micro:bit]で掃除させてみたら面白いかもね」「じゃあそれ商品化してみようよ」……といった具合に。製作途中でコストが合わなくてボツになってしまうこともありますが、アイデアはポンポン出てきます。あと、現状のラインナップを見て考えることもありますよ。男の子向けの製品が増えてきたら、女の子向けの少し可愛い物を作ってみたり……。商品誕生に至るまでの道のりは様々ですね。

―貴社の製品のおすすめポイントを教えてください。

“目的”に合わせた商品を用意できる点です。例えば、弊社の「ねこみみ」という製品。名前の通り、カチューシャにつけた猫の耳を動かす製品です。「耳を動かす」というシンプルな目的を達成するために、不要な機能は削ぎ落しています。いろいろなモノが刺さる「万能な基板」は使い勝手が良いかもしれませんが、配線がたくさん出てしまったりして見た目が良くありませんから。また、完成品がみんな同じだと面白くないので、加工する余地を残しています。最後にお子さまにアレンジを加えていただき、個性を出せるようにしています。

撮影した日にモニタリングで使われていたプログラミング・フォロ for micro:bit

―やりたいこと(目的)にフォーカスして不要な機能は削り、子どもたちに工夫する一手間を与える……。それが貴社の製品づくりなのですね。

ワークショップでラジコンカーなどの車を作る場合、最初の最初からブロックで作るのも有りですが、ブロックはセンスが問われます。ですので、あまり得意ではない子どもでも最低限楽しめるように、車の共通の部分は同じものができるようにして、あとから個性を出せるようにあえて設計しているんです。子どもたちは画用紙や割り箸、ストロー、針金などを使って、自由にマシンを改造したりデコレーションしたりして楽しんでくれています。

昨今、STEAM教育やプログラミング教育が注目されているので、国内外問わず様々なメーカーから多くの製品が出ています。どこもしっかりとした製品ですが、「一つの製品でたくさんのことができる」というのが大体の会社の基本的なコンセプト。それさえ買っておけばOKなので、それなりの価格になると思います。弊社の場合、まず一つ“目的”を定めた上で製品を作っています。様々なことができるというよりは、一つの狙ったことをやりたい。その分低コストになるので、いくらかはお求めやすい値段になっていると思います。目的を定めた製品を作り、子どもたちが個性を出して楽しめる“ものづくり体験”ができるよう頑張っています。

―ワークショップなどでお子さんが製品に触れている時、どんな所をチェックしていますか?

楽しいと思うポイントはお子さまによって違います。その子がどんなものに興味があって、どんなものを楽しいと思うのかよく観察していますね。「この子はプログラミングにはあまり興味がないけど、作ったもので遊ぶのは楽しそうだな。じゃあこんな製品があったら楽しんでプログラミングをしてもらえるかも」など、製品開発に向けて考察しながら子どもたちを見ています。他にも、小さなお子さまが操作する場合、考えていたよりも動かすのが難しいこともあります。そういった課題も見つけて改良しています。

―実際にワークショップに来られたお子さまは、初めてでもスムーズに貴社の製品を扱えるのでしょうか?

小学校2〜3年生であれば、すぐに使えるようになる子も多いですね。マウス操作の覚束ない子でも、最初の10分程度練習したらあとは繰り返しで、どんどん慣れていきます。ワークショップが終わる頃には、自由にマウスが動かせるようになっていますね。

プログラミングは、最初に説明してもやっぱり難しいのであまり伝わっていないだろうと感じることもあります。でも、ブロックを触っている間に、途中で「あ!」と顔つきが変わる子がたくさんいるんですよ。「お兄さんが説明していたのはこういうことだったんだ」ってわかる瞬間があるみたいで。私としても「あ、今気付いたな」と空気として感じる瞬間がすごく面白いですね。

―宗村さんご自身はどのようなお子さまでしたか?

小さい頃は病気がちで、学校を休むことも多かったですね。休んでいる時は、家でNHKの教育テレビを見ていました。身近にあるものを使って工作する『つくってあそぼ』が特に好きでしたね。風邪を引いていても、『つくってあそぼ』が始まる時間になったら起きて、わくわくさんと一緒に工作をしていました。見終わった後も、作ったものを改良したり、設計図を書いたりしながら遊んでいましたね。

―プログラミングを始めたのは何歳頃ですか? 

中学生の時です。ゲームの作り方を学べる本を買ったんです。その本でプログラミングの基本的な構造は理解できたのですが、読み終わってから「特に作りたいゲームがない」ことに気付いてしまって……(笑)その後、高校に進学して授業や部活でロボットを作っていくうちに、プログラミングが必要になったので改めて勉強しました。

「パソコンの中で完結するプログラム」より、「実際の世界でモノを動かすプログラム」の方が、私は好きだったんですよね。作りたいゲームはなかったけれど、ロボットなどのモノを動かすのは楽しくて。大学ではロボットサークルに入っていましたし、友達と一緒のものづくりは、とてもワクワクしました。

―宗村さんの子ども時代に、プログラミング教育があったら良かったと思いますか?

考えたことはなかったですけど、あったらよかったのかもしれないですね。ただ、学校で学んでも、結局は本人のやる気によるところが大きいと思います。

プログラミングは「手段」なので、最初に「目標」がないと勉強しにくい。漠然とやり方を覚えても、モチベーションを保てないというか……。中学生の時の私も、プログラミングに興味はあったけれどゲームを作りたいわけではなかったので、やる気が続きませんでした。

大学ではロボットを作るための知識を得る講義がたくさんありました。私はロボットサークルに所属していたので講義で学んだ知識を生かす機会が周りよりも多かったように思います。実際に問題にぶつかり、学んだ知識を活用することで、その意味や必要性を感じ学習意欲がわいてきました。壁にぶつかったときに学問からヒントを得るSTEAM教育的な学習法が、私には合っていたのかなと思います。プログラミング教育が自分の時代にあり、問題を解決する手段としてプログラミングができていたとしたら、そのほかの授業で学ぶ様々な知識の使い道をもっと深く理解しながら学習できていたかもしれません。学校で習う知識は消費税の計算のように普段から使うものもあれば円の面積の求め方のようにそれほど普段は意識しないものまで様々です。プログラミングを始めると目的に応じていろいろな知識を使うことが必然的に多くなります。

プログラミングがきっかけでさらに別のことに興味をもっていたかもしれません。プログラミング教育と聞くとセットで「論理的思考」という言葉をよく耳にします。

プログラミングによって物事の因果関係や順序を正しく考える力を身につけるのも大事だと思いますが、私はどちらかというとプログラミングで自分の作りたいものが形にできた喜びやほかの学問の知識をそれに活かせた時の面白さを体験できるという意味でプログラミング教育が当時にあったらよかったなと思います。

―製品を作ることへの想いをお聞かせください。

幼い頃の自分が喜ぶものを作りたいと思っています。当時、「これがあったらこんなモノも作れたかも…」という気持ちがあったので。実際に子どもが使って楽しめるものを作りたいと常に考えています。私が作ったもので楽しく遊んでもらえるのはとてもうれしいですね。

今後も「目的からプログラミングを学べる」製品を増やしていきたいです。先ほどご紹介した「ねこみみ」という製品も、「こうすれば耳が動くんだ」とわかったら、「じゃあ、このブロックとこの部品を使えば、耳だけじゃなく動く尻尾も作れるんじゃないかな」など、考え方次第で発想を伸ばせると思います。これからも、ひとつの製品から自由に想像を膨らませてもらって、子どもたちが楽しめる商品を作りたいです。

―貴社の製品に興味をもっておられる保護者の方へメッセージをお願いします。

弊社の製品を買ってみても、子どもにどう教えていいかわからない保護者の方もおられると思います。まずはワークショップにお越しいただいて、弊社の製品に触れてみていただけたらうれしいですね。家で作ったものをお持ちいただいて、「ここをこうしたい」とか「こういうのを作ってみたい」といったご質問にもお答えできるかと思います。ワークショップは定期的に開催しておりますので、皆さんのご参加を心よりお待ちしております。

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執筆:ヒューマンアカデミーこども教育総合研究所 編集部

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