~副所長訪問記~エンジニア女史によるエンジニア女子のための「AI体験」特別授業/ 大妻中学高等学校のICT教育
2020/01/06
IoT(Internet of Things)、人工知能(AI)、ビッグデータ、ロボット、ブロックチェーンなどの先進技術を活用した新たな社会「Society 5.0」の実現に向けての取り組みが進む中で、AI人材の育成は重要な課題です。こうしたことを背景に、2020年度から小学校でのプログラミング教育の必修化に続き、2021年度以降からは中学校・高等学校でのプログラミング教育の内容の充実が明示されており、生徒や保護者らの関心がますます高まっています。これからの新たな社会を生き抜くには、「デジタル社会の『読み・書き・そろばん』である『数理・データサイエンス・AI』の基礎知識」(※1)が必要不可欠ともいわれています。(※1統合イノベーション戦略推進会議「AI戦略 2019」より引用)
こうした社会の変化に鑑み、女子教育の伝統校である大妻中学高等学校(成島由美校長)では、早期に生徒一人一台のタブレットなどのICT技術を授業等に活用したり、AIのフロントランナーを特別講師として招へいしたりするなど、ICT教育に積極的に取り組まれています。
前回、AI・IT領域の研究と事業開発を進めている園田智也先生による『AIと機械学習』をテーマに特別授業が実施されましたが、今回はその授業の流れをうけて生徒がAIのプログラムを体感する授業のレポートです。この日は、三尾由佳里先生による「Python(パイソン)」というプログラミング言語を使って、機械に絵や図を覚えさせようという授業でした。
三尾先生は津田塾大学卒業、株式会社日本総合研究所に入社しシステムエンジニアとして活躍後独立。現在は東京と千葉にて、子ども向けプログラミング教室を主宰されていることもあり、柔らかな雰囲気で授業は進行していきます。授業では、前述の園田先生が作られたAI・機械学習体験ツールを用いて、生徒たちが人気のキャラクターや動物・身の回りのものなど好きなテーマをあげて登録していきます。
次に生徒たちがパソコンを使って、それぞれのテーマそった絵を描いて機械に学習させていく、いわゆる「機械学習」を行いますが、人気キャラクターがプロジェクターに次々と映し出されるととても上手く描けている絵やわざと形を崩して描かれているもので生徒たちはひとしきり大盛り上がり。女子らしくリボンや星などのシンプルなイラストをグループで見せながら描く様が、まさに「プチエンジニア女子」でした。
機械学習させているログ画面で、loss→学習した時の誤差、acc→精度など言語の命令など機械学習の経過を、三尾先生がポイントを絞って解説してくださるので、生徒たちもどのような結果になるのか興味深く先生の話に聞き入ります。
出来上がったファイルをパソコン上にダウンロードして、ファイルをFTPサーバにアップし、いよいよ学習結果の確認にうつりますが、同じテーマで絵を描いてみると、機械学習がうまくいったものと、案外違うものに認識されてものに分かれてしまいました。
左)ひよこを描いたつもりがこうもり63.5%(ひよこ11.8%)
右)うさぎらしい絵が94.8%で正しく認識された結果
なぜ違う結果になったかを三尾先生が生徒たちに問いかけると
「共通項が少ない」「認識されていないのでは」「サンプルが少なかった」など生徒たちが次々に発言していきます。この点も授業の大切なところ。最近のニュースで「AIのバイアス化」が問題となっていましたが、リアルタイムな社会課題を生徒にわかりやすく理解させるまさに活きた授業そのものでした。
(こども教育総合研究所 副所長・青木)