最近「理系脳」が話題になっていますが、理系脳は2030年以降も活躍する職業とも大きく関わりがあるといわれています。今回は、子どもが将来、社会に求められるような人材になっていくために、理系脳とはなにか?なぜいま注目されているのか?を紹介します。また子どもを理系脳に育てるための方法についてもまとめていきます。
理系脳って?
従来の定型的な事務作業やルーティーンワークが、AIによって効率化されていくため、人間にしかできない仕事に注目が集まっています。コンピュータが代替できない職業として、子どもを将来、医者やエンジニアなど理系の分野に進ませたい保護者の方も最近増えており、幼児のうちから理系脳を育てるためのおもちゃなども続々と売り出されています。とはいえ理系脳とはどういったことを意味するのでしょうか?
理系脳とは、理系的思考ができることを言います。「問題や課題に直面した時に、自分の力で考え、試行錯誤しながら発展させていく」能力のことで、決して数学やプログラミングに強いなどの能力を指すものではありません。つまり、自分の頭で考えて、ひらめきを得られるような力です。そういった理系的思考を伸ばすために、近年ではSTEAM教育が注目されています。
STEAM教育のSTEAMとは、「Science(サイエンス)」「 Technology(テクロノジー)」「 Engineering(エンジニアリング)」「Art(アート)」「 Mathematics(マセマティックス)」のそれぞれの頭文字を取った、科学・技術・工学・芸術・数学の教育分野を総称した言葉です。子どものうちからこれら5部門の学習を重点的に行い、今後迎える AI 時代やグローバル社会に適応できる、グローバルな人材を育成していこうという方針を「STEAM教育」と呼んでいます。ここで重要なのは、単に「科学技術」や「IT 技術」「プログラミング」に秀でた人材を生み出すための教育なのではなく、理系分野を通して「自分で学び、自分で理解していくこと」ための教育方針ということです。
これからの日本
理系脳を重視するのは、将来の職業選択だけではありません。今後は高校や大学での学習内容にも理系科目、STEAMの分野が注目されています。
2018年文部科学省は、「高等学校普通科において文系・理系に分断されている実態を改め、基本的に文理両方を学習した大学進学者の育成を目指す」ことを提言しました。具体的には、データ・サイエンスの基礎となる確率・統計やプログラミング、理科と社会科の基礎的分野を、高校生の時点で確実に習得させることを目指しています。また、従来よりも高度な、微分方程式や線形代数・ベイズ統計、データマイニングなどの内容を学びたい高校生のため整備をすすめ、文理両方を学ぶ人材を育成することも求められています。
大学では、学部に関わらず、社会のニーズやグローバル社会の国際トレンド等を背景に、今後多くの学生が必要とする STEAM やデザイン思考などの教育が十分に提供できるよう、大学による教育プログラムの見直しを促進しています。具体的に、学生が共通的に学ぶリベラルアーツと、学生が選択する人社系、STEAM分野、保健系等の専門分野が、特定の学部だけでなく、学部を超えて提供される構造へと変えていく狙いです。この構造改革により、STEAM系科目を専攻する AI のトップ人材や専門人材を育成するとともに、文理両方を学ぶことにより必要な AI に関する素養を身につけた人材の育成を目指しています。
つまり、高校や大学でのSTEAM分野の重要性が高まっていく中、子どものうちから理系に親しませることで、高校や大学進学の際に、より有利に進めることができるのではないでしょうか。
今日から実践!
では、子どもを理系脳に育てるためには、何をすれば良いのでしょうか?
幼児期であれば、
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最近人気が高まっている理系のおもちゃを活用する
- 「車がたくさんあるね。数えてみよう」「あと10分で出かけるよ」と、毎日の生活の中で数字を取り入れ、数字に関心を持たせる
など、身近なことから始めてみましょう。特に、日常の会話に数字を盛り込むことは、一見あまり意味のないことに思えるかもしれませんが、このような会話を続けることで、子どもが数字で表現することを当然のものとして考えられるようになり、理系分野を学習する素地へとつながっていきます。
5歳~小学校低学年の子どもであれば、数字を使った会話や理系のおもちゃに加えて、理系的思考を伸ばすための習い事を始めてみるのが良いでしょう。たとえば「ロボット教室」や「プログラミング教室」は、実際に子どもが手を動かしながら、論理的な考え方を身につけることができ、2020年にプログラミングが必修化することも後押しして、現在人気の習い事となっています。
子どもを理系脳にするためには、「理系おもちゃの活用」「会話に数字を取り入れる」など家庭でできることから実践し、子どもの興味や関心に合わせて習い事なども検討していくのが良いのではないでしょうか。